″読書感想″ 進化思考

書籍

クリエイトの用語に、
生物学用語がよく使われているのはなぜか。

「進化」と「創造」は同じだから。

進化の仕組みに照らし合わせて
アイデアの産み方を紐解くという
いっぷう変わった本の話。

進化思考

進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」 [ 太刀川英輔 ]

新しいモノが生まれるには
大きく二つの要素が絡んでいる。
それは「変異」と「適応」
 
いきなりなんだ!って
思われるかもしれません。
しかし、「進化」という自然現象に
照らし合わせてみると、あら不思議。
よく分かるように。
 
 
進化の仕組みはご覧の通り、

1_変異によるエラー

2_自然選択と適応

3_形態の進化

4_種の分化

 
それぞれ、解説すると、

1_変異によるエラー
⇒生物は遺伝するときに完全にコピーできなくて
エラーを起こすんですね。
大きくでると突然変異と呼ばれる現象です。

2_自然選択と適応
⇒生物は自然のふるいによって、
環境に適応した個体が残りやすい。
よって、変異した個体が生き残る環境になると、
その個体が新たな形として残っていく。

3_形態の進化
⇒さらに世代を繰り返すと、
細部まで環境に適応した形態に行き着く

4_種の分化
⇒そこから住む場所や生存戦略の違いが
生まれると種類が分かれていく。

 
要するに、
突然変異したものが、環境に適応し、
適応したものから、また変異が生まれ、
さらに適応した種が残っていく・・・。
 
「変異」と「適応」の繰り返しを「進化」と呼ぶ。
 
この進化の現象がまんま創造にもあてはまり。
最初に突拍子もないモノが生まれて(変異)
それが、ユーザーや市場への適応していく。
その生き残ったものを「創造」と呼ぶ。
 
といえるのではないかと。
だから、進化の仕組みになぞらえて考えると
新しい創造を作るヒントになる、って考え方の本。
 
 
めちゃくちゃ面白い!!
そんなこと考えたこともなかった。
創造は天才の特権だなんて思ってたんですが、
どうにも、そうではなく、
最初にエラーを起こせるかが肝心。
まあ、バカになれ!って、
クリエイターは、よく言われるやつです。
 
 
ちょっとだけ、
本の中身を紹介すると。

まず【変異】で重要なのは次の9つ。
 
変量…極端な量
擬態…状況をまねる
欠失…装備を減らす
増殖…常識より増やす
交換…違うものに入れ替える
転移…場所を変える
分離…要素を分ける
逆転…真逆の状況にする
融合…意外なものと合わせる

例えば、「変量」
進化的な変量は
キリンの首やペリカンのくちばし。

これを創造的な変量に置き換えると、
イス。
幅を増やしてベンチ
高くすればカウンターチェアなどなど。
 
そのほか、
擬態 蝶のカモフラージュ、携帯を模したスマホ。
欠失 手足のないヘビ、羽のない扇風機
増殖 ムカデの足、ピアノ
交換 ヤドカリの殻、ボールペンの芯
などなど…。

いわれてみると、「そうだな。」
なんか太刀川マジックにかかったみたいだ。
 
 
そして、変異と同じく大事な要素

【適応】で重要なのは4つ。

解剖…中身を分けて理由を観察する
系統…物事の古くからの文脈を知る
生態…モノや人の繋がりを理解する
予測…未来の課題を知り希望を描く

 
なぜ、機能するのか、機能しているのかを
紐解くプロセス。
 
 
たとえば「解剖」とは
形を分解することで、
その形の意味を理解すること。
 
理解していくと、
世の中に生き残っているものは、
シンプルで最適化していることが分かる。
美しいものはとてもシンプル!
 
なかでも、自然物の最適化レベルは、
人工物の比でない。
 
例えば、オリーブの木は
実・葉・枝・根・花の五種類で成り立っている。
いっぽう、扇風機は
100種類以上のパーツから成り立っている。
 
さらに、似通った環境で生きる生物同士は
形態も似てくる。

サメ、イルカ、ペンギンが泳ぐときの形は
ほとんど同じ。収斂進化と呼ぶそうだけれど。
 
 
モノの本来の意味を理解し、育て方を知ることで、
パーツの新しい用途も考えられるようになる。
それが解剖。

そのほかにも、
「系統」
一流の人は、みんな口を揃えて言うけれど、
「ゼロから1を生み出す」ような
唐突な現象は発生しない。
 
分野問わず、言われるのだから
そういうことなんでしょう。
 
だから、歴史を知ることが大事。
すべてのものは、
過去の創造や自然の仕組みに
必ず強い影響を受けて出現する。
 
優れたクリエイターほど、
歴史への理解が深い。だそうだ。
 
 
「生態」

新しい創造とは、
繋がりを作ること。

それは、人と人であったり
人とモノであったり。
結論から語ると
そういうことなんですけど。
 
生物は繋がりの中で生きている。
競争であったり共生であったり…。
それぞれの繋がりのなかで、
適応できるように進化してきた。
 
それは人もまったく同じ。

あらゆるものは繋がっている。
繋がりに頼って生きているし、
それは時に目に見えない、
直接役立っているものばかりだけではない。
 
そんな繋がりを探っていく思考。
 
 
適応の最後のひとつ
「予測」

予測のなかでも「バックキャスト」に
重きをおいていました。
 
どういうものかというと、
「なりたいなぁ」です。
 
今より5kg痩せて、
スーツを着れるようになりたいなぁとか。
未来のイメージを思い浮かべて
目標を現在に近づけていくこと。
 
 
ありたいイメージを思い描くのに、
大事なのは可視化です。
 
ダヴィンチとかミケランジェロは、
芸術家でもあり、建築家でもあった。

彼らのすごいところは、
イメージ図を作るのが上手かったんですね。
具体的な視覚の情報としてあると、
グッと実現してやろうという気がおきます。

まとめの感想

だいぶ端折って書きました。

創造とは天才の偉業みたいに
思われがちですが、
実はそんなことない。
最初にエラーを出せる環境が
大事である。と。
そして、
そのエラーを育てていく環境も。
 
なぜなら、
変異と適応は単体では創造にならないから。
思考に意図的にエラーを発生させる思考
それが「進化思考」
 

けっこう金言が多いので、
創造以外の部分でも、人生を楽しく生きるうえで、
参考になると思います。
 
だけど、
著者・太刀川さんはこんな苦言を呈している。

「現代の創造の多くが
その目的を市場経済で勝つための仕組みとしている。」
「自然よりも人間が創造が下手なのは
その本質的な問いを忘れているから。」

果たして、私たちは「創造」ができているのか。
いや、できる環境を作れるのか。

そんなことを考えちゃいましたね。

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