″身につまされる映画の話″『異端の鳥』

映画

誰かと違うことは、
そんなにいけないことなの?
って映画の話。

異端の鳥

異端の鳥 [DVD]

データ

公開:2020年
製作国:チェコ、スロバキア、ウクライナ

あらすじ

東欧のどこか。
ホロコーストを逃れて疎開した少年は、
預かり先である一人暮らしの老婆が
病死した上に火事で家が消失したことで、
身寄りをなくし一人で旅に出ることになってしまう。
 
行く先々で彼を異物とみなす周囲の人間たちの
酷い仕打ちに遭いながらも、
彼はなんとか生き延びようと必死でもがき続ける―。

出典:映画『異端の鳥』公式サイトより引用

もう、徹底的に男の子が
いじめられる話。
 
 
出会う人、出会う人に
十人十色な虐げられ方をする。
 
ユダヤ人だから。
そんな理由で。
 
 
第二次大戦中、
疎開した田舎町で
繰り広げられるユダヤ人差別。
 
どうして人は、
他人と違うだけで攻撃してしまうのか?
 
 
生物学的には、
天敵に襲われるリスクを避けるために
いつもと変わった行動をするものを
攻撃して群れから追い出そうとするらしい。
 
いわば生存戦略のひとつだ。
 
 
似たようなことで、
映画の中盤に印象的なシーンがある。
 
鳥の群れに、
ペンキを塗った1羽の鳥を放ったとき。
放たれた鳥は他の鳥から、
めっためたにされて、
ついには死んでしまう。
 
同じ種族であるはずなのに、
異質なものとみなされたのだ。
 
 
このシーンには、
直後に起こる出来事の
暗喩にもなってたりするけれど、
それは脇に置いといて。
こう書いておきたい。
 
人には理性がある。
鳥ではないのだ。
 
 
 
少年が受けていく仕打ちは
肉体労働が主な奴隷だったり。
 
男娼・・・
男にも女にも性のはけ口にされたり。
 
物語が進むにつれて、
しだいに少年の口数が減っていき、
とうとう一言もしゃべらなくなる。
 
 
そして、犯罪に手を染めていくさまは、
生々しい。
終盤になってくると、
顔つきが全く変わるんですよ。
「本当に同じ子?!」ってくらい。
 
 
さらに変わったことが分かるのは、
ここ!!
 
自分をいじめた人と
似たような村人が
ソ連軍に攻撃される
ところ。

ここで、少年が笑うんですよ。。。
「ざまあみろ。」って思いがあったんだろうか。
ああ、変わってしまったのね。と
思わずにはいられない。 
 
 
 
映画の中で大きな特徴がひとつ。

少年の名前を劇中で誰も呼ばないのだ。
「素性を知らない誰か」になっているなと。
 
この部分は、現代のSNSにすごく似ていると
感じていて。
 
私たちは「素性を知らない誰か」として
攻撃されることもあるし、
攻撃する側にもなっている。。。
 
 
それゆえに
ラストのバスでのシーン。
窓にね、うん。
とあることをするわけですが、
なかなか感慨深いシーンです。
 
やっと、ひとりの人間に
もどってきたのだな。と、
そう思わざるをえない。 
 
 
全体的に、
極端にセリフは少ない。
少年ほぼしゃべらないし。

けれど、映像でちゃんと説明されているので、
わけがわからなくなることはない。

とにかく映像の情報量がすごいので
見終わったあと、ドッと疲れがきますけどね。
 
 

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