『爆弾』シリーズを読む

無力な国家権力vs.“無敵の人”になった弱者の
手に汗握る知能戦!・・・のお話。

爆弾

爆弾【電子限定特典付き】 (講談社文庫)
著者:呉 勝浩

自称・スズキタゴサク。取調室に捕らわれた冴えない男が、
突如「十時に爆発があります」と予言した。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。爆破は三度、続くという。
ただの〝霊感〟だと嘯くタゴサクに、警視庁特殊犯係の類家は
情報を引き出すべく知能戦を挑む。
炎上する東京。拡散する悪意を前に、正義は守れるか。

出典:裏表紙より

取り調べ室で起こる心理戦に、寝食を忘れて一気読み!

迷惑な酔っ払いとして捕らわれたスズキ タゴサク。
彼が予言した通りに爆破される施設。
これに対する、警察組織。
爆弾は、どこに、いくつ仕掛けられたのか?

ずーっと、スズキの主導で事が進むため、
後手後手にまわる警察組織に、ずーっとヤキモキ。

読んでる間は、「なんとかスズキに一泡吹かせたい!」って思っちゃう。
「爆弾を止められるか?」じゃなくてね。
だから、終盤の怒涛の展開にハッとさせられる。
「俺もスズキに転がされている!」って気づかされるんです。
単なるミステリー群像劇じゃなくて、
倫理観を試されたような。。。

この作品をあとから見返して思ったのは、
心の内が描写されないものが2人いること。

ひとりはもちろん、容疑者スズキタゴサク。
もう一人は、警察組織イチの切れ者、類家。
最も緻密な心理戦している主要のメンバーは最後まで心の内が描かれない。

心の描写がないのに、心理戦が成立するのか?
・・・しているんですよね。
大事なことほど、直接的には描かれない。

で、これ続編があるらしい。
本当に?

法廷占拠 爆弾2

法廷占拠 爆弾2
著者:呉 勝浩

東京地方裁判所、104号法廷。

史上最悪の爆弾魔スズキタゴサクの裁判中、
突如銃を持ったテロリストが立ち上がり、
法廷を瞬く間に占拠した。

「ただちに死刑囚の死刑を執行せよ。
ひとりの処刑につき、ひとりの人質を解放します」
前代未聞の籠城事件が発生した。

スズキタゴサクも巻き込んだ、
警察とテロリストの戦いがふたたび始まる。

出典:オビより

1作目以上に、権力者vs.弱者が描かれる。

敵の敵は味方。なーんてことはなく、
スズキvs.テロリストvs.警察の三つ巴になっていく。

読者の大半はどちらかというと
権力者ではないはずなんですよね。

なんだけど、面白いのは、作中の弱者側が行う、
カウンターパンチに共感しにくいというか。
むしろ、逆の立場に同情しちゃうというか。

うまく言えないんだけれど、
弱者は、さらなる弱者を生んで自分の心の安寧を保とうとする。
そういう人間のいやらしい部分が垣間見えた小説かなと。
感じたわけです。

うがった見方をしすぎか?

前作同様、後半まで、いいように転がされて、
どんどんフラストレーションが溜まっていく。
歯ぎしりしながら読み進めて、
ついにフラストレーションが爆発した瞬間!
最高にスカッとする。

この話運びは、爆弾とかかってると思うんです。
もう、このシリーズは我慢比べみたいなところがあって、
モヤモヤをどこで爆発させてくれるか、じっと待つ。
そんな楽しみかたをしています。

1作目と違って、明確に『爆弾』をシリーズとして
スタートさせる終わり方をしてますので、
次作を気長に待ちたいと思います。

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