【動画編集の参考本】「特撮と怪獣」エンタメの光と影

書籍

僕はもう、「ウルトラマン」のお墓を
ちゃんと作っています。
彼は、早く死ぬべきだ、と思っています。

「特撮と怪獣 わが造形美術 増強改訂版」P10より引用

思わずギョッとする出だしから
始まるのが、こちら。

特撮と怪獣ーわが造形美術
増強改訂版

ウルトラマンをデザインした男
成田亨さん。

彼へのインタビューで構成された、
半自叙伝です。

元が1996年に刊行されたもので、
2021年、現在で考えると、
「ちょっと違うんじゃない?」と
思うところがあるかもしれない。

そのあたりは、
当時の時代背景を考慮すると
致し方なし

成田さんが、いかにして、
「特撮」と
向き合ってきたか。

そして、
円谷プロとの確執ー。

それらを赤裸々に書いている。

これがまた、
あけすけに語るもんだから、
「これ大丈夫だったのかな」
といらぬ心配をしてしまう。

特に、SNSの普及した現代なら、
炎上まったなし!!

エンタメの光と影が垣間見れる
1冊でした。

ぜひ、手に取ってもらいたいけれど、
読んでみて個人的に面白かった話を。

ウルトラマンは服を着ているの?

宇宙人ということで、
やはり宇宙服を着ているだろうと。
手袋と靴を履かせたそうです。

ウルトラマン本編を見て頂ければ、
分かると思いますが、
手袋と靴の存在はハッキリ気づきます。

しかし、最終的に
肌なのか、服なのか曖昧にしたものに。

だから、
服を着ているともとれるし、
着ていないともとれる。

見る人の解釈に委ねているわけですね。

他にもそういう部分はあって、
それは顔のデザイン。

目は大きく印象的に。
ちょっと吊り目で
「怒り」が内包されています。

宇宙人の定番「グレイ」のようです。

ただグレイと違い
恐怖を感じさせません。

そのポイントは口。
口が微笑しているんです。

いわく、
ギリシャ、アルカイック時代の
スマイル。

古式微笑だそう。

「目で怒り、口で笑う。」

さらにウルトラマンには
鼻がありません。

このシンプルさが
成田さんの求めたもの。

本当に良いデザインは単純で、
くだらないデザインは
なんかぐちゃぐちゃです。

「特撮と怪獣 わが造形美術 増強改訂版」P16より引用

この効果は絶大だったようで、
撮る角度によって、
ウルトラマンの表情が違って見える。

つまり、見る人へ
解釈を委ねているデザイン。

他にもデザインの裏話は
多々ありますが、
驚いたのは、
ウルトラマンの顔の数を
成田さんは把握していなかったこと。

どういうことかというと、
ウルトラマンのマスクは、
全部で3つあることが
ファンの間では有名で、
話数を重ねるごとにデザインが
変わっていくのです。

誰がマスクのデザインを
変えていったのか。

謎がひとつ生まれました。

怪獣の美学

怪獣の特徴とは何か?
生みの親である、
成田さんの主張はこう。

土地神や太陽神の一種。
宗教の観念に捉われず、
生まれた時代の希望と
祈りを持っている。

つまり、こういうことだと思います。

麒麟や朱雀などといった
概念に近い存在で、
キリストとかゼウスのような
存在ではない。
ということ。

そんな、怪獣たちは
「美しい」ものである必要がありました。
そこで、デザインする上で
次の3つに気をつけていたそうです。

1 既存する動物をそのまま使わない
2 頭が二つあるなどの奇形化はしない
3 体に傷をつけたり血を流したりしない

化け物ではなく、生物として描く。
生物として不快に思う表現は避ける。

この3つに加え
デザインの面白さを出すために
「抽象性」を足したそうです。

しかし、本当の抽象化ではなく
「半抽象化」

意外性を追求しすぎると
大衆と遊離してしまうからだそう。

「半抽象」という言葉は本に
度々出てきます。

これが「特撮」で
目指したものなのかもしれません。

どういう抽象化を行ったかというと、
ピカソや古代エジプトの壁画などの
技法を足したのだとか。

どっかで聞いたなと思ったら、最近話題になったこの本に同じことが!

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考 [ 末永 幸歩 ]

この本でも紹介されていた手法が
使われているみたいです。

どの怪獣のどこに、何を足したのか?

それは、本を読んで確かめてみてください。

円谷プロに抱く不信感

成田さんはセットデザインも担当。
まさに八面六臂の大活躍。

その上で、新しい技法も生み出しました。

「強遠近法」
模型一つ一つに遠近法をつける。
手前のものを大きく、奥のものを小さく作る。
たとえば、
ビルのミニチュアだったら、
カメラ手前の窓は大きく作り、
奥の窓は小さく作る。など。
「逆遠近法」
セット撮影の手法。
遠近法は手前を広く、奥を狭く使う。
その逆に手前を狭く、奥を広く使った奥行が広がって見える効果がある。

初めはウルトラマンの
撮影を楽しんでいたようで、
全部自分でデザインができ、
いろんな挑戦ができると語っています。

しかし、
当時ウルトラマン関連の書籍には
「美術監督 成田亨」の名前は
載ることがありませんでした。

それに対し不満を燻ぶらせていた
成田さん。

円谷プロはなんていうかと言うと、
美術監督というものは、
会社の指示に従う職人にすぎないというんです。

今だに僕のおかげで飯食っているのに、
飯食うどころか何億って稼いでいるのに、
僕の名前を消してしまうとか、
そんなことばっかりやり、
そして僕には金をよこさない。

こういうことが、
やっぱり許されていいいのかどうかと。

「特撮と怪獣 わが造形美術 増強改訂版」P179,180より引用

かなり、辛酸をなめたみたいで、
わびしい生活を送っていたことが、
書かれています。

「ウルトラマン」というと、
明るいイメージばかりが思い浮かびます。

その裏には、泣いている人もやっぱり
いるんです。

おわりに

モノを作る上で参考になる話が
結構ありました。

それはテクニックというよりも、
心構えですかね。

知らなかった「へえ」が
たくさんあって、
最後まで面白く読みました。

戦争経験者でもあった
成田亨さんは、
原爆が落ちた瞬間を絵にかくことを、
生涯の目標とされていました。

それが実現できたのかどうか。。。

詳しい人がいたら知りたいな。と
思いました。

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