「敵は、先入観だよ」
p24より引用
「完璧な人間はいるはずないのに、
p28より引用
自分は完璧だ、間違うわけがない、
何でも知ってるぞ、と思ったら、
それこそ最悪だよ。」
今日はこの小説の感想をば。
全5編からなる短編集で、
主人公は全て小学生。
現在の「主人公」が、
小学生だったころを振り返る―
5編中、4編はそんな内容だ。
つまり、
小学生が主人公だから子供向け。
でなく。
今の私たちに向けられたものだと思う。
大人になったからこそホロリとくる。
悲しいとかではなく、懐かしい寂しい。
そんなノスタルジーに溢れた作品。
自分の子ども時代を振り返ってほしい。
毎日5時間の授業に、
日が暮れるまで勤しんだ部活動。
休みになれば友だちと時間を忘れて遊び・・・
ばかりではない!
ほんのちょっぴり悪いことしなかっただろうか?
そんな、ズルい少年少女のリアルさが
読んでいて気持ちいい。
ちなみにタイトルにもなっている
ソクラテスについてご存じだろうか。
紀元前469~前399に活躍した
古代ギリシアの哲学者。
「生きるとは何か」問い続けた人だ。
彼の残した言葉にとても有名なものがある。
「私が知っているのは、自分が何も知らないということだけだ。」
ここで、冒頭のセリフ引用に戻って頂きたい。
世の中は決めつけ、レッテルばりだらけ。
知らずのうちに、自分もそんな言動とっていたりしないだろうか。
実は、「逆ソクラテス」は
単なる短編集ではなく、
「先入観」との闘いをテーマにしていたりする。
・担任にダメ呼ばわりされる生徒
・クラスに馴染めない元イジメっ子
・ボーっとしている先生の秘密
・暴漢を退治したバスケ部
・ドローンで虐待から同級生を救う!
などなど、
がんじがらめになった現状を打ち破ろうとする、
その姿はスカッとするし、
何より、それぞれの話にはミステリーが隠されている。
ミステリーは、自分の思い込みを楽しむもの。
そして、読後に先入観だらけだったなぁと思う物。
この本にも、それが詰まっています。
1読したら、たぶん次の言葉が口癖になるでしょう。
「僕は、そうは思いません」
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