タイヤだって
エアロビ見るし、
汚れたらシャワーだって浴びる。
そして恋だってするのだ―。
RUBBER ラバー
製作国:フランス
公開:2010年(日本では2012年)
あらすじ
荒野に打ち捨てられた1本のタイヤ。 その名はロバート。 ある日、彼に自我が宿る。 見るもの全てに好奇心を抱くロバートだが、 やがて念力で物を破壊できる事に気づく。 次第に壊す対象は人間へと移っていき。。。
タイヤです。
どこからどう見てもタイヤです。
しかも殺人タイヤです!
なぜ、タイヤなのかって?
「理由などない!」
というわけで感想を。
映画へのメタフィクション
どんな映画サイトを覗いても、
あらすじはタイヤのことしか書いていないので、
イロモノの雰囲気があるこの映画。
実は、それはカモフラージュで、
もっと「イロモノ」な部分があります。
強烈な映画というジャンルそのものへの
メタフィクションが詰まっているのです。
冒頭でストーリーテラーがあらわれて、
画面の向こうの私たちに語りかけます。
「E.T.はなぜ茶色なのか?
理由などない!」
・・・いきなり、かましてきたな。
E.T.以外にも、
いろいろな映画を取り上げて、
理由などない。と語ります。
つまり、映画には崇高なテーマなどない。
と言ってるようにも聞こえます。
それを象徴するのが、
このストーリーテラーの登場の仕方。
荒野にやってきた1台の車
・・・の後部トランクから登場。
「トランクって内側から空くのか?」
などなど、さまざまな違和感を
まき散らしていく。
「理由などない」を聞くに、
たぶんわざとなんでしょう。
本編には意図的っぽい
「おや?」が散見されます。
そして、我々観客へのメタファーも。
映画の醍醐味の1つは、
「危険な思いをしなくてもハラハラする
人生体験ができる。」
ですが、
そんな安全地帯にいる我々に対しての
メタファーとしか思えないシーンが出てきます。
というわけで、
メタメタが詰まった作品のため、
あらすじはタイヤのことぐらいしか
書けなかったんだろうなぁ。と思いました。
愛着の湧くタイヤ
全編通しての見どころは、
なんといっても、
CGを一切使わないタイヤのアクション!
表情もなければ
言葉をつむがない、
にも拘わらず、
意志を持って動いているように見えるさまは、
どう動かしているのか気になるところ。
鏡を見て、身だしなみを気にしたり、
部屋でテレビを見るシーンなどなど、
映画の後半になってくると
なぜか愛着が湧いてくるから不思議だ。
警官と対峙するシーンなどは、
目がないはずなのに、
見つめ合ってると感じる。
念力を使うときにプルプル震えるところは
実家の犬を思い出してめちゃカワイイ。
・・・何言ってるだろう私。
いっぽうで
容赦なく念力で人の頭を吹き飛ばす
残虐なギャップもある。
唯一の残念なところは、
「ロバート」という名がありながら、
誰も彼の名を呼ばないのである。
まあ、タイヤだからね。
おわりに
「映画にテーマは必ずしも必要ない」とは
言っても、
コンセプトは必要である。
では、この映画が描きたかったのは何か?
あくまで私の意見ですが、
1種の制作側のグチみたいな、そんな気がした。
映画の常識をぶち壊そうとしてたんなら、
もうひとつインパクトが欲しかったな。と。
殺人タイヤという、
バカバカしい存在がありながら、
本編は静かに始まり、静かに終わる。
ただ、タイヤにだって人は感情移入できることを
照明してくれた点は、素直にスゴイと思います。
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