問 ケーキを3等分してください。
どのように切れ目を入れますか?
ちなみに私はこのように分けます。
では、このような分け方をする方はいますか?
「ケーキの切れない非行少年たち」P34より引用
とても等分されているように見えません。
こんな切り方をしてしまう子供たちの話です。
著者、宮口さんの医療少年院での
経験がまとめられた1冊。
ここから見えてくることは、
「私たちが見ないようにしてきた子供たち」が
いるということ。
読んで心に留めておきたいと
感じたことを書置きしておきます。
反省以前の問題
医療少年院にいる中高生たちの多くは、
・見る力
・聞く力
・想像力
が弱い子たちだそう。
例えば、簡単な図形を写すことができない。
短い文章も復唱できない
といったことです。
つまり、考える力が足りない。
本書の言葉を借りるなら「知的障害」とされます。
犯罪を行った少年たちは「認知行動療法」が実施されます。
誤った「考え方」を改善するものです。
しかし、そもそも考える力がないため、
改善できるものがない。。。
反省を促す以前の話になってきます。
実際、殺人事件を起こした子でも
「自分はやさしい」と思っている子もいるそうです。
IQでは問題を見つけられない
やっかいなのは、
知的障害を正しく図る基準が未発達だということ。
現在IQ(知能指数)を基準に
70以下で知的問題ありとみなされます。
ですが、問題は70より高いIQでも、
詳しく調べると「難あり」とされる子がいる。
軽度とされる子たちです。
そして、知的障害の子たちのうち、8割は軽度だそう。
IQ的には問題ないとされるため、
問題を起こした時、
「ずる賢い」「やる気がない」と見られがち。
学校では「問題児」とされてしまったり…。
そう、軽度でも今の社会は大変生きにくくなっています。
中には自分で障害を持っていると
気付く子たちもいますが、
IQには問題がないので、
そういった意見は見過ごされてしまうのだとか。
「普通とちょっと違う」だけで
家庭、学校、会社で、イジメ、虐待の対象になっていき、
犯罪に手を染めていく子が多いそう。
被害者が被害者を生む負のループ。
こうなってしまった要因のひとつが
「褒める」教育。
問題行動を起こす子でも、
何かしら褒めることを探すのが今の教育。
例えば、
勉強ができなくて自身をなくしている子に対して
「走るのは早いね」とほめても、
勉強ができない事実は変わりません。
本当の問題を先送りにしてしまっている。
ただ褒めることは悪いことではありません。
ましてや、単純に叱ることも良いことではありません。
解決策はあります。
自分を理解すること
「被害者への手記を読んで、
もし自分の家族が被害者だったらって考えると、
犯人をボコボコにしてやりたい。
自分のやったことが怖くなった。」「いつも途中で諦めて最後までやったことが
なかったけど、
先生から途中で諦めたらだめと言われ、
最後まで諦めずにやったら、できた。
とても自身がついた。」「先生から注意されている他の子を見ると、
「ケーキの切れない非行少年たち」P147,149より引用
自分も昔はああだったのだと思った。
どうして注意されるか分かった。」
少年院の子どもたちが
変わろうと思ったきっかけだそうです。
ポイントは自分がどんな人間か
自身で気づいたこと。
変わるためのきっかけは
自己に注意を向けられるようにする。と
宮口さんは語っています。
そのためには、押し付けではダメで。
自身で気づきを得る必要があるので、
気付きの可能性のある場を提供すること。
「見守る」という姿勢が大事なんですね。
デール・カーネギーさんも
アドラーさんも語っていたことです。
おわりに
普段の私たちでも、
政治の話や抽象画にしたって
理解できないことは、
「わからない」といって敬遠しがちです。
もしかしたら、遠ざけたもののひとつが
身近の事件に繋がっているのかもしれません。
これまでとニュースの見方が変わる良い本です。
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