【今さらな感想】「アーティスト」 サイレントの世界

映画

今回いまさら見てみた映画は、
ちょっと一風変わったフランス産!
「アーティスト」

アーティスト [ ジャン・デュジャルダン ]

公開:2011年(日本では2012年)
受賞:第64回カンヌ国際映画祭 主演男優賞
   第69回ゴールデングローブ賞 作品賞、主演男優賞、作曲賞
   第84回アカデミー賞 作品賞、監督賞、主演男優賞・・・などなど
製作:フランス

ざっくりあらすじ

1927年、映画産業がサイレントからトーキーへと
 移行しつつあるハリウッドが舞台。
 主人公は無声映画のスター俳優ジョージ。
 時代の移り変わりとともに落ちぶれていく
 かつてのスターの葛藤と
 逆にトーキー映画のスターとして成功していく
 新人女優ぺピーとの愛を描く。

ずーっと前から見たいみたいと思っていたけれど、
忙しさにかまけて、すっかり忘れていた映画

この映画が一風変わっているのは、
全編モノクロかつサイレントである点。
(正確には一部、音がつく箇所もある)

あるのは音楽のみで、
セリフどころか足音など、
いっさいの効果音、環境音がありません。

100分と長尺のサイレント映画を視聴するのは、
これが初めてです。

怖さもあり、期待もありました。

特に「ようこそ映画音響の世界へ」を見た後ですし。

音がもたらした、可能性から、
逆に音の演出に頼らないでどこまでやれるのか?

・・・杞憂でしたね!

めちゃくちゃ面白い。

公開された2011年は、トーキーどころか
CG・VFXをバリバリ使っていただろうに
古典的な手法で、ひけずおとらずのものを作れるとは。

監督のミシェル・アザナヴィシウス氏は、
サイレント映画を見まくって、
サイレントのルールを。頭に叩きこんだそうです。

なので、昔の映画へのオマージュが随所に盛り込まれ、
「本当に映画が好きなんだなぁ。」と感じずにはいられません。

ちょっと、印象的なシーンを3つほど。

1つ目

事務所の階段で、
サイレントのスター、ジョージと
後にトーキーでスターとなるペピーがすれ違うシーン。

階段を下るジョージと
階段を上がっていくペピー。

その後、お互いに気づいて
踊り場で語らうのですが、
ペピーが上でジョージが下の構図のまま。

役者の演技もあいまって、
没落と成功を同時に映像だけで表現しています。

2つ目は、
ジョージの控室へと立ち寄ったたペピーが
ジョージの上着に袖を通し、自らを抱きしめるところ。

この辺りはペピーのジョージへの愛が感じられ、
セリフがないからこそ、かなりグッとくるシーン。

3つめ

アーティストの冒頭は「俺は絶対にしゃべらないぞ!」
ジョージのセリフで始まります。

スパイ映画の冒頭という設定での一幕。

この映画はサイレントですよ!と
暗にしめしているんだと思っています。

アーティストのラストは声付きで
こんなセリフで終わります

「お静かに!」

トーキーへと移り変わりにより、
音をちゃんと録らなくてはいけないため、
スタッフたちはノイズが入らないよう、
静かにしないといけないのです。

「声を出せない」から「出してはいけない」へ

ここら辺、セリフまわしだけで表現しているので
オシャレだなぁと感じました。

ちなみに映画のタイトル
「アーティスト」ですが、
どこら辺がアーティストなのか考えてみました。

日本の図書館には本を分類するための
「日本十進分類法」があり、
それによると映画は芸術のジャンルに入るそうです。

映画は芸術。アート。

確かに、映像だけで微妙な感情を表現する
これはまさしくアート。

それを踏まえて、アーティストとは?

この映画には、数々の映画へのオマージュが
ふんだんに盛り込まれています。

つまり、ミシェル・アザナヴィシウス監督が
いままでの映画に対して賛辞を贈っているのではないか?

そう考えると、なんかしっくりくる。
そんな映画です。

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