簡潔に言うと、
むかしむかしの
「若気の至り」を思い出し、
なんだか小っ恥ずかしくなる映画。
監督、マーティン・スコセッシ。
主演、ロバート・デ・ニーロ。
そのほか、今となっては
名だたる人物が関わっている傑作!!
の感想です。
データ
製作国:アメリカ
公開:1976年
受賞:第29回カンヌ国際映画祭 パルム・ドール 受賞
あらすじ
ベトナム戦争帰りのトラビスが手に入れた仕事は、 夜勤のタクシードライバー。 彼が見るニューヨークの街並みは、 麻薬や売春が横行。 そんな社会に次第に不満を募らせていく。 日々、荒んでいく心。 ある日、拳銃を手に入れたことから、 トラビスは狂人と化していく。
「孤独な若者の話」と
言われることが多い本作。
見る前までは、
世間からないがしろにされた男の話かな。
と思ってましたけれど、
ちょっと違いました。
孤独は孤独なんですが、
自分で壁を作ってしまう感じ。
元軍人で不眠症の主人公トラビスは、
仕方なしに始めたタクシードライバーという仕事で、
来る日も来る日も誰かを運ぶ毎日。
誰とも打ち解けることができず、
非番のときはポルノ映画を見て過ごす。
たくさんの人の人生を運んでいるが、
その人生の中に自分は入っていない。
誰も自分の事を気にかけてはいない。
という風に感じていきます。
実は誰かに拒絶されているというよりも、
自分が他人と距離を置いている。
そんなことがちょっと見えてきます。
象徴するシーンが、やっぱり初デートでしょう。
気になる女性を連れて、ポルノ映画に行きますからね。
正気の沙汰じゃねえぜ。
案の定、愛想をつかされて、
さらにトラビスは孤独感を抱えるのです。
あとは、社会について詳しくないので、
口当たりの良い政治家の意見を鵜呑みにするとか。
好きな子はストーキングするとか。
トラビスの中の狭い世界観があらわになり、
すごく苦しくなります。
自分に置き換えると、
上京したてのころを思い出しました。
昔馴染みもな~んもない場所。
仕事へのグチも、気晴らしの遊びも
ひとりで抱え込むとき。
そういう時は、
世界に自分しかいないみたいな孤独感が
強く出ます。
「もっと、自分に注目してほしい」
人が「生きている」ことを実感するのは、
他人との繋がりからだそうで。
そうすると、
こんなことになっているのは、
「社会が悪いんだ!」という、
世間への見当違いな不満が溜まってきます。
しかも、変に同情されると
腹が立つという面倒くささもあります。
まあ、若さゆえの痛さというやつですね。
そんな特有の「孤独感」を
「タクシードライバー」は描いていると
感じました。
終盤に近付くにつれ、鬱屈した感情の置き所に
悩んだトラビスは、とうとう銃を手に入れて、
狂気が加速していきます。
そこで、かの有名なモヒカン姿になります。
「タクシードライバー」で検索すると
絶対、目にするであろう姿です。
狂気すら感じる正義感が行き着いた先、
として出てくるので、
とても笑うに笑えない。
空回りする正義。
サングラス姿が不気味である。
そしてついに、
トラビスは犯罪に手を出して・・・
ラストシーンをどう解釈するか。で
悩むところですが、
トラビスの1つの理想の形に落ち着いたのかな。
人が犯罪に手を染めるのは、
「話を聞いてもらえなかったとき」だそうで。
同情されるよりも
「自分はここにいる」主張がしたかった
トラビスとしては、ハッピーエンド。
めちゃ笑顔だし。
映画で印象的なのは、
やはり、タクシーの描写でしょう。
ネオンや手紙とのコラージュ。
スロー演出など。
技術的な仕掛けがあるのは、
タクシーに乗っている時です。
タクシーから見た世界。
トラビスが見ている世界。
つまり心象表現になっているといえます。
だから、怒ったとかムカつくとか、
不満の感情のセリフは、ほぼない。
なぜかというと、見れば分かるから。
とまあ、
以上がタクシードライバーの感想。
面白い、面白くない、
白か黒かで判断できないタイプの映画で。
とてもグレーであると言えます。
ゆえに、心を掴まれる映画でした。
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