【普通に行き詰ったら見る映画】「エル・トポ」感想

映画

この映画のあらすじを最初に考えた人には、
ノーベル文学賞でも贈るべき。
それくらい難解な映画。

エル・トポ

出典:ロングライド ホームページより引用

データ

製作国:メキシコ
公開:1971年

あらすじ

凄腕ガンマン、エル・トポ。
ひとり息子と旅をしていた彼は、
ある日、山賊に襲撃された街に遭遇。
 
正義心にかられたエル・トポは、 
修道院を根城にしていた山賊たちを
倒すことに成功。
 
そのとき助けた女性の導きのまま、
最強のガンマンになるという
旅をはじめることに。
 
だが、旅のさなか、
戦いの無意味さを感じはじめて・・・

物語は5章からなり。
それぞれ

1_プロローグ

2_創世記

3_預言者たち

4_詩篇

5_啓示

とサブタイトルがついている。
パッと思うのは、どこか宗教的。
 
そう、人の一生、この世の無常みたいなものを
描いている。
どこか聖書を解釈したような映画。

・・・と私は見ている。

  
出てくるのは、不完全な登場人物たち。

●ずっと全裸なトポの息子。
 
●男娼化させられた修道士。

●「腕がない」や「小人症」などの
奇形者や障害者

●同性愛(男同士、女同士両方)

●近親相姦

●分かりやすく醜悪された富裕層

●7歳の息子に銃を撃たせ、
殺人をさせてしまうエル・トポ。
 
 
どれかを受け入れられても、
全てを受け入れるのは難しい。
 
誰かのタブーに絶対ふれてしまうような、
描写がたくさん出てきます。
 
そんな「エル・トポ」は
正しくアートの世界にある映画で、
これが認められるから、
映画はまだ芸術の分野にあるのでしょう。
 
アートなので、ストーリーは
観客それぞれの感性に委ねられている
と言っても良いかもしれません。
 
 
ただし、破天荒な映画かと思いきや、
解釈するためのヒントはあります。
 
 
それは映画の冒頭。
 
エル・トポの意味は「もぐら」と
わざわざ解説が入る。

そして続くナレーションが印象的。

もぐらは穴を掘って太陽を探している。
時に地上へたどり着くが、
太陽を見たとたん目は光を失う

出典:「エル・トポ」より引用

「エル・トポ」の物語を
ざっくり書くと。

誰かに必要とされるために
山賊を倒し

好きな女に必要とされるために
銃の名手をうち倒し

虐げられた奇形者たちを
救うために芸者に身をやつし

 
 
自己を削っていった果てに
エル・トポを待ち受けていたのは・・・。

恋人に突き放され、

息子に突き放され、

助けたと思った奇形者たちは
無残にも虐殺にあうのである。

 
 
世界からひとり切り離されていくエル・トポ。

特に印象に残ったのは恋人との
セックスシーン。

愛を確かめ合う場面のはずだが、
エル・トポの恋人は
鏡を使ってエル・トポでなく
自分の顔を見つめるという。
 
なんだかむなしくなってくる場面だ。
 
 
  
監督をつとめた
アレハンドロ・ホドロフスキー氏は、
今作で主演、脚本、音楽も手掛けている。

塚本晋也監督の「野火」を見た時も
思ったのですが、
映画の中核を全て1人で担うタイプの作品は、
生き様みたいな強烈なエネルギーがありますね。

命を賭してる感というか。
 
 
何かが面白い、つまらないは、
実を言うと自分のこれまでの経験から
判断しているものだったりします。
 
これまでの人生で
「エル・トポ」を推しはかれる物差しが
自分の中に存在しないので、
まったく測れない作品。
 
 
すっごい濃い
感性の引き出しができた気がする。

10年後に見たらまた感じ方が変わるのかな。

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