【編集の参考映画】彼らは生きていた 感想

映画

ただただ驚嘆するのは、
映画に映し出される全てが「本物」であること。

イギリスの帝国戦争博物館に保存されていた、
第一次世界大戦の記録映像をベースに、
BBCが持つ退役軍人のインタビューから
音声も追加。

現在の映像は1つも使われていない。
圧倒的「生」感がある。

出典:アンプラグド ホームページより引用

「彼らは生きていた」

公開:2018年(日本では2020年)
製作国:ニュージーランド、イギリス
配給:アンプラグド


配信サイトでは、
原題の「ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド」
使われています。

意味は、「彼らは年をとらない」

本物だからこそ生まれる「生」感

1914年に起きた第一次世界大戦。
中でも激戦を極めた、塹壕戦を中心に描かれています。

この映画には著名人はいっさいでません。
名もなき市井の人々。
とりわけ、画面に映るのは
多くの若者たち。

軍に入隊志願する若者の多くは、
「ゲーム感覚」
中には年齢を偽って入る子も
多かったそう。

どこか、楽しいキャンプ感覚で
入隊した彼らは次第に戦争の現実を
目の当たりにしていきます。。。

ちょっと驚いたのは
「楽しかった」意見が多くあったこと。

戦争とは悲惨なことが
フィーチャーされがちですが、
当時の肌感覚だと、
これが普通だったのかもしれません。

確かに映像に映る彼らは笑顔が多いです。
「おい、撮られてるぞ!」と言ったり、
カメラに興味津々の人がいたり。

ただ、それとは、裏腹に
悲惨さも映し出されています。

それは、本物の死体が映るのです。

どんな現場で生きていたのか?
如実に見えてきます。

兵士の目前で起こる地雷の爆発も、
演出ではなく、本物です。
爆煙が明けると倒れている人が
見えるところは何とも言えません。

特に、印象的だったのは、
敵軍と味方に挟まれてしまった突撃兵たち。

敵軍に突撃するものの、
有刺鉄線と阻まれ銃撃にあい、
もたもたしてるうちに、
味方からの砲撃の巻き添えを食らう。

これが地獄というやつか・・・。

全て本物だからこそわかる
当時の「生」感覚が衝撃でした。

「戦争はいけない」という主張を
強く全面に出しているわけでなく、
塹壕生活をフラットに映し出したさまは、
自然と考える作りになっています。

丁寧な編集

ここまで没頭できるのは、
映像の加工・編集技術のおかげ。

元となった映像は、
全て合わせると2200時間以上あるフィルム!
さらに、モノクロかつ無音で、
100年の月日で経年劣化も激しかった。

それらを精査し、きれいな映像に修復。
しかもカラー映像に加工!

これだけでも気の遠くなりそうな作業ですが、
こだわりは映像だけでなく音にも!!

この映画、ナレーションの変わりに、
退役軍人たちのインタビューボイスが
使われています。

音の出典というのが、
BBCが所蔵していた600時間に及ぶ、
退役軍人、200人のインタビュー。

もとが無音のため、
読唇術で、言葉を読み取り、
セリフのアテレコをしていたり、
効果音も追加しています。

そして、BGMがほとんど入らないことで、
作り物感を減らしていると感じました。

これらの丁寧な作業が、
実際に現場にいるかのような
臨場感を生み出しています。

最初は、モノクロで始まり、
途中からカラー映像に切り替わるところも
印象的でした。

モノクロは思い出がたりとして機能し、
カラーは「今、戦場を生きる彼ら」を
映し出している。

正直、この執念は
見習うべきかも。。。

おわりに

映画の中で、
すごく、忘れられない言葉があります。

「同情せねばと言う気持ちが
何も分かっていないことを示している。」

何とも言えない気持ちになります。

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