“アニメドキュメンタリー″ FLEE フリー 感想

映画

ドキュメンタリーであり、
アニメーションである。
いっぷう変わった映画の話。

FLEE フリー

出典:映画『FLEE フリー』公式サイトより引用

データ

公開:2022年
製作国:デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランス
 
あらすじ

アフガニスタンで生まれ育ったアミンは、
幼い頃、父が当局に連行されたまま戻らず、
残った家族とともに命がけで祖国を脱出した。
 
やがて家族とも離れ離れになり、
数年後たった一人でデンマークへと亡命した彼は、
30代半ばとなり研究者として成功を収め、
恋人の男性と結婚を果たそうとしていた。
 
だが、彼には恋人にも話していない、
20年以上も抱え続けていた秘密があった。
あまりに壮絶で心を揺さぶられずにはいられない過酷な半生を、
親友である映画監督の前で、
彼は静かに語り始める…。

出典:映画『FLEE フリー』公式サイトより引用

「FLEE」とは「逃げる」という意味。
語り部であるアミンの 
闘争より逃走するしかなかった人生。
これの本当の辛さを、
疑似体験する作品。
 
やっぱり、最大の特徴は
アミンのインタビュー、
生い立ちを語る部分を
アニメーションで描いているところ。
 
ドキュメンタリーに
アニメを用いているのは、
ちょくちょく見かけるけれど、
いずれもナレーションの
ベースとして使われているのが普通。
 
というか、それしか見たことなかったんだけど、
インタビューに答えている部分を
丸々アニメにするのは初めて見た。

 
これが不思議な感覚なんですよね。
 
 
実は、全編アニメーションではなく、
一部実写が出てきます。
 
しかし、実写パートは
リアルにアミンが
体験した当時の映像ではなく、
そのときの社会情勢に近い映像。 
 
ある意味、ウソの映像だ。
真実ではあるが、かなり客観的。
中には人の死体など、
センセーショナルな映像が多く、
生々しい。
 
 
一方で、
アニメーションのほうは、
アミンのリアルな声なんです。
 
にもかかわらず、
見せられるのはアニメ。
つまり、主観なのに抽象的な映像。
 
この虚実のバランスが絶妙。
 
しかもアニメーションは平板。
近年のジャパニメーションに求められるような
なめらかな動きは一切合切排除して、
簡素なつくり。
人物の輪郭とか含めてね。
 
これこそが、
ドキュメンタリーらしさを
担保していると思いました。
 
 
平板だからこそ、
見てるものに、判断を委ねられているというか。
やっぱり、視覚情報というのは大事で、
戦争など、ショッキングな映像ほど、
相手への憎しみの感情が増幅する。
 
けれど、そういうことはしていなく。
だから、あくまで問われているのは、
我々の道徳心
のような気がした。
 
被害者に対して、
どんな態度をとれるのかって。
 
見終わっての感想は、
ドキュメンタリーをアニメでやってみた。
でなく、
アニメーションでしかできなかった。
といった印象。
 
 
たぶん、映像を実写で撮って
そのまんまアニメにしてる気がする。
だって、見せ方がドキュメンタリーの手法、
そのものなんだもの。
 
 
難民問題は、現実の日本でもある。
それを痛感するニュースが多いですね、最近。
 
ふと「日本沈没」の原作に出てくる
セリフを思い出しました。

この地球上の人類社会は、
まだ一つの国民が、自分たちの国土以外の所で
生きる権利を保障されるようになっていない。

出典:「日本沈没 下」 P105より引用

 
故郷とは、
誰からも侵害されることなく、
ずっと居ていい場所。
 
このアミンの言葉が、
胸に刺さって抜けないんですよね。。。
 
 

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