“全編1シチュエーションの異色の構成”『ザ・ホエール』感想

全編1シチュエーションなのに、
まったく飽きない構成力!の映画の話。

ザ・ホエール

アカデミー賞2冠_4/7公開『ザ・ホエール』予告篇

データ

公開:2023年(日本公開)
製作国:アメリカ
監督:ダーレン・アロノフスキー

あらすじ

恋人アランを亡くしたショックから、
現実逃避するように過食を繰り返してきたチャーリーは、
大学のオンライン講座で生計を立てている40代の教師。
歩行器なしでは移動もままならないチャーリーは頑なに入院を拒み、
アランの妹で唯一の親友でもある看護師リズに頼っている。
そんなある日、病状の悪化で自らの余命が幾ばくもないことを悟ったチャーリーは、
離婚して以来長らく音信不通だった17歳の娘エリーとの関係を修復しようと決意する。
ところが家にやってきたエリーは、学校生活と家庭で多くのトラブルを抱え、
心が荒みきっていた……。

出典:映画『ザ・ホエール』オフィシャルサイトより引用

1851年に発表された世界的小説『白鯨』をモチーフに描かれる人間賛歌。
細かく描くと、『白鯨』をモチーフのひとつに。かな。
 
初めは、あらすじから、
その巨体さゆえに「ホエール」と呼ばれていたチャーリー・・・的な、
考えでしたが、とんでもない浅はかさでした。
 
劇中で、とあるエッセイが繰り返し語られるのだけれど、
それが最初と最後で繋がる瞬間が超気持ちいい。
そして、物語の進行とこのエッセイがリンクしてるのも
芸が細かいなぁと。
 
例えば冒頭では、何のエッセイか全く分からない。
それと、リンクするように、おぞましい得体のしれないチャーリー。
・・・だって、おおよそ人間とは思えない体型をしてるんだもの。
 
中盤、チャーリーの人となりが分かりはじめてくると、
おそらく、大体の人間がエッセイの作者について予想を立てると思う。
たぶん、アイツだ!って。
想像通りのチャーリーなら、あの人のエッセイを大事にしてるって。
 
そんな予想が裏切られるのが、終盤ですよ。
実は、作者が意外な人物だって明かされた時に、
パッと、目の前が明るくなったような、
ほんとそんな感じ!
そんなアハ体験をぜひ、して頂きたい。
 
 
にしても、この特殊メイクの細かさ。
本物にしか見えないから、凄すぎる。
そして、やっぱりこの巨体に説得力を与えてるのは、
ブレンダン・フレイザーの演技力。
超重そうな演技するから、相当辛いんだろうな、この体。
そう思えるし、
しゃがむこともままならない体なのに、どう生活してるんだろ。って
思ってたら、マジックハンドを巧みに駆使して、
リモコンとったり、体洗ったりするわけよ。
これも、妙に「なるほど」と納得して、272キロの巨漢への
リアルな手触り感があった。
 
 
けっこう、劇中のシーンも印象深いのが多くて。
1つは、その体ゆえに入れなくなった部屋を見つめるとこ。
変わってしまったものと変わらないもの、その境界を感じた。
その境界を乗り越えられないチャーリー。
チャーリーは変化に踏み出す勇気がなかった。
 
そしてもう1つは、ずーっと、天気の悪い5日間であること。
くもりだったり、雨だったり、これなんか分かりやすい心情ですよね。
しかし、最後の最後で・・・とか。
 
そして、最後に1つ、取り上げるなら、
やっぱり、絵にかいたようなヤケ食いのシーン!
ピザにマヨネーズ、茶碗1杯分かけたのは笑ったよ。
ただ、コミカルなんだけど、そこに至るまでの経緯で悲しくなる。
「誰かの悲劇は誰かの喜劇」だと思った。
その中でも一番の悲劇は主人公チャーリーが
太りすぎて笑えなくなってる(呼吸困難になってしまうため)こと。
たぶんこれが1番の悲劇。
彼の笑顔が見れる瞬間は実は、ほぼない。
 
 
笑えるし、泣ける。
良い映画でした。

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