感じるのは恐怖か、不安か、それとも無関心か?
席にいる間、ずっとソワソワする映画の話。
関心領域
出典:映画『関心領域 The Zone of Interest』オフィシャルサイトより
データ
公開:2024年5月(日本公開)
製作国:アメリカ・イギリス・ポーランド
監督:ジョナサン・グレイザー
あらすじ
アウシュビッツ収容所。 第二次世界大戦下、ホロコーストや強制労働により、 ユダヤ人を中心に多くの犠牲者をだした施設。 1945年、アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす家族がいた。 ルドルフ・ヘス所長の一家である。 そこは一家にとって楽園。 食べるものも困らず、空は青く晴れやかで、子どもたちは楽しげに笑いあう。 ・・・そして、 窓から見える壁の向こうでは、大きな建物から今日も煙があがる。
原作は、マーティン・エイミスの同名小説。
監督をつとめたのは、ジョナサン・グレイザー。
ドイツ人でなく、イギリス人監督。
つまり、この映画は、よそから見たアウシュビッツを映し出す。
ちなみに「関心領域」とは、
第二次世界大戦中、ナチス親衛隊がアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む
40平方キロメートルの地域を指す言葉として使ったらしい。
何に「関心」を抱いていたのか。いろいろな思いを巡らせることができる。
席にいる間、ずっとソワソワさせられる映画はこれが初。
延々鳴り響く「ボウボウ」という不協和音。
誰から見ても幸せな上流家庭。
目から入る情報と、耳から入る情報のズレからくる居心地の悪さ。
人は未知のものを恐れる。
お化けであれ、モンスターであれ、
恐怖の対象が何か分かれば、それは和らぐのだけど、
この「ボウボウ」という音の正体は何か。
最後まで直接描かれることはない。
ずっと、拭い去れない不安感がつきまとう。
ホラーの文脈で語られる戦争映画といえばいいのか。
ただ、間接的に音の正体は示される。
窓にちらりと映る煙突の煙。
ときおり聞こえる銃声
兵隊同士の会話。
何かを運ぶ収容者たち
ふとした瞬間にこぼれる断片から、
ひとつの推測が生まれる。
もしかして、人を燃やす音では?
そして、最後に映し出される博物館で、すべてを知る。
たぶん、劇場で見たほうがいい映画。
ノイズの少ない環境で見ないと、
この音のこだわりに気づきにくいんじゃなかろうか。
にくいのが、
ときおり、家から離れて、川に行ったりするシーンがあること。
そこで「ボウボウ」という音がピタリと止む。
意外と人って慣れるもので、
はじめは、異様な音でも、次第に気にならなくなる。
聞く音を選別できるようになる。
劇中でも、母ヘートヴィヒが不自由のない現在の暮らしをすごく気に入っていて、
離れたくないと、夫と口論するシーンがある。
はたから見たら異様に映るし、
普通の感覚では、この地に留まりたくないはず。
しかし、ヘートヴィヒは慣れてしまった。
彼女の母が遊びに来るのだけど、不快感に耐え切れず
何も言わず家を立ち去ってしまうことからも、ヘス一家の異様さが際立つ。
と、ここで話を戻すけど、
音が止む場面を定期的に挟むことで、
音に慣れさせないようにしてる。と思った。
だとしたら、すごい作りだよな。と思う。
とんでもない映画を見た。。。
とにもかくにも、
見聞きすることを無意識に取捨選択している私たち。
その「関心」の在り方を意識させられる映画でした。
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