若い世代は
「戦争のイメージだけで見ないでほしい。
表面だけで判断しないでほしい。」と言い、
上の世代になればなるほど、
「昔よりひどい地域」だと言う。
そんなパレスチナ・ガザ地区の素顔とは?
という映画のお話。
ガザ 素顔の日常
出典:映画『ガザ 素顔の日常』オフィシャルサイトより引用
データ
公開:2022年
製作国:アイルランド、カナダ、ドイツ
監督:ガリー・キーン、アンドリュー・マコーネル
あらすじ
地中海に面した美しいビーチ。
出典:映画『ガザ 素顔の日常』オフィシャルサイトより引用
サーファーやラッパーに普通の大学生たち。
あなたの全く知らないガザ地区へとご招待!
東京23区の6割ぐらいの狭い場所に
パレスチナ人約200万人が暮らすガザでは
人々が貧困にあえいでいる。
イスラエルが壁で囲み封鎖したため
物資は不足し移動の自由もなく
「天井のない監獄」と呼ばれる。
それでも日常を力強く生きようとする人がいる―。
温暖な気候と、
サーフィンに興じる若者たち。
市場の雰囲気も賑やかで、
住民たちもニコやか。
一見すると、陽気な南国の雰囲気だ。
そこに、このページ冒頭の言葉が来る。
「戦争のイメージだけでみないで。」
確かに、偏見で見てたかもしれない。
まぎれもない、ガザ地区らしさ、魅力が
詰まっている。
たぶん、人同士のやっかみとか
ないんだろうな~。
そんな気質は見て取れるし。
特にあれよ。
屋台のカフェに顔出しただけで、
「いつものね!」って
カフェラテ作ってくれる感じ。
すげえ良い!!
中には、3人の妻と40人の子供を養う
超タフな親父もいて、
文化の違いを感じられて面白い。
中学生、舞台演出家、大家族の父。
ガザ地区に越してきた母親、
ラッパーなどなど。
いろんな登場人物の話を
数珠つなぎに展開していきますが、
そのつなぎ方にタクシーを使うという見せ方が
気が利いてるなぁと思います。
タクシーの運ちゃんが乗せていく人々には、
それぞれ、ドラマがあって。
運ちゃんはそれには気づかず、
一種の語り部のようになっている。
映画と乗物は相性が良い。
目の前に映し出される景色は、
自分の意思では変えられなくて。
移ろう映像に、
いろんなものを発見していく工程は、
すごく似ていると思う。
ちょっと、このテクニックは
パクりたいですね。
さて、前半は明るい絵作りで
進んでいくのですが、
徐々に、この地区の持つ
“闇”の部分が見えてくると、
絵の雰囲気が暗く重たいものに。
分かりやすいのは
タクシーの車窓ですね。
前半と後半でガラリと変わるから、
なぜ、こんなことに・・・となっていく。
ラッパーが出てくるんですけど、
まさか、「あんな秘密」があるなんて。
と驚きましたし。
こういう見せ方というか、
編集もすごく上手い。
後半で決定的なのは、目だし帽の武装兵が出てきてから
緊張感が上がる上がる。
紛争が始まる瞬間、
ミサイル直撃の瞬間を捉えているんですけど、
もう、言葉も出ない。
ガザ地区の若者が、抱えるフラストレーション。
届かない訴えを発散させるがごとく、
国境のイスラエル軍に石を投げつけて、
手ひどい報復を受けて。
負の連鎖がグルグルまわって
このどうしようもない感じ。
陽気で寛容な素顔と、
抑圧されて陰鬱な現実と、
さまざまなものがない交ぜな感じ。
心に来ました。うん。
この映画自体は2019年製作らしく、
実は、日本公開までに3年経ってるんですね。
現在のガザ地区は果たして
どうなっているのでしょうか?
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