映画感想 ❝沈黙の自叙伝❞

映画

支配から逃れるには、
支配者になるしかない。
 
権力の恩恵と悲劇と。
最後の主人公の顔が忘れられない。
そんな映画の話。

沈黙の自叙伝

出典:映画『沈黙の自叙伝』公式サイトより引用

データ
公開:2023年9月(日本公開)
製作国:インドネシア・ポーランド・ドイツ・シンガポール・フランス・フィリピン・カタール
監督:マクバル・ムバラク

あらすじ

青年ラキブの父は刑務所に、兄は海外に出稼ぎに出ている。
彼は、 インドネシアの田舎町で何世紀にもわたり一族で仕えてきた、
退役した将軍フルナが 所有する空き屋敷で、たった一人の使用人として働くことになる。
フルナはラキプに対して立場を超えたように親身に接し、父親代わりの存在となりつつあった。
ラキブ自身もフルナのアシスタントとして、仕事と生活の中で天職を見出す。
そして、地元の首長選挙に立候補した将軍の選挙キャンペーンが始まり、二人の運命も大きく動き出す。

出典:映画『沈黙の自叙伝』公式サイトより引用

善良であろうとした主人公ラキブは、
その❝善良❞に苦しめられていく。
 
将軍フルナの使用人として、
「彼のために」「良かれと思って」
実行したことが枷となっていくんです。
 
 
序盤は、どこにでもいそうな偏屈ジジイであるフルナに
振り回されるラキブが描かれている。
それだけでなく、虎の威を借りる・・・ではないけど、
フルナの権力で良い思いをしているシーンも描かれ、
まあまあ、スネ夫みたいなやつだなと、
主人公ラキブに対して思ってたのだけど。。。
 
中盤、様子が一変!
フルナの選挙看板が何者かに、破壊される事態が発生し、
それに猛り狂うフルナに対して、
「壊した犯人探します」と、ラキブは言うんですね。
 
主人に対して善良な使用人をまっとうしようとしたわけです。
 
無事、犯人は見つかりますが。。。
ここから、独裁者に立てついたものの末路を
ラキブは否応なしに知らされてしまう。
その現状にラキブの、今度は「善良な市民」としての心が
自分を追い詰めていく―。
 
 
 
追い詰められていく、ラキブの心象を覗き見しているような、
鏡の演出が多用されており、
かつ鏡なので、同時にこちらの心も覗き見されてるような、
そんな風に思った。
 
一番多いのが、バックミラー越し。
次いで、サイドウインドウ。
表情は一部しか見えないため、
事態や、心中を伺い見てるような気持ちになる。
さらに、サイドウインドウとラキブの心がリンクしてて、
ウインドウが完全に閉まってる時は、心も閉ざしてる。
だから、フルオープンな時は、気が強くなってるし、
ちょっとだけ閉まってる時は、何かまだ開いてない部分をもってる。
 
 
最後にこれだけ!
葬儀のシーンが2回出てくるのだけど、
これを比べると、
ラキブの「支配者になってしまった」顔
それが、心にズシリとくるんですよね。
 
 
余談。。。
KARAOKEシーンは、日本でもあるあるなやり取りで
シリアスなんだけど笑っちゃった。

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