映画感想 “ダンサー・イン・ザ・ダーク”

最後の歌は聞きたくないわ

グランド・フィナーレが始まって―
カメラが上へと登る

それはラストの合図よ

そうなると もうガッカリ

最後から2曲目が終わったら
映画館を出てしまうの

そしたら映画は永遠に続くでしょ?

出典:『ダンサー・イン・ザ・ダーク』セルマのセリフより

ダンサー・イン・ザ・ダーク

「ダンサー・イン・ザ・ダーク 4Kデジタルリマスター版」新予告<12月10日(金)公開>

データ
公開:2000年12月(日本公開)
製作国:デンマーク
監督:ラース・フォン・トリアー

あらすじ

60年代のアメリカ。
片田舎に住むセルマは息子ジーンと2人暮らし。
昼間は工場で働き、夜は内職。
合間には生きがいであるミュージカルの稽古にいそしむ。
つつましいながらも、周囲の理解と愛情によって、
幸せな日々を送っていた。
しかし彼女には、決して誰にも明かせない秘密があった。
セルマは遺伝性の病で視力を失いつつあり、
それはジーンにも遺伝。
手術を受けない限り彼も失明することになる。

セルマは、息子のために
手術代を必死に貯めていたのだが、
ある日。それが盗まれしまい……。

最後から2曲目に映画館を出る。
そうすると、映画は終わらずに続いてる。という、
主人公セルマのセリフが
最後にガツーンと、効いてくるんだよね。

彼女が続けたかったものとは何か。
自分の未来、息子の未来、はたまた・・・。
 
あまりのリアリティに
実話が元ネタなんじゃないかと、探してしまった。
 
そこまでのリアリティを感じた理由は、
撮影方法、見せ方にある。
ほとんどの場面を手持ちカメラで
手ブレのある映像を使って構成している。
 
編集も、あえてジャンプカットを多用。
精緻に撮れるはずの映画では、
普段、そんなことしないんだけど。
 
これは、ドキュメンタリーによくある見せ方だ。
 
限りなく、現実に近づけた見せ方でありながら、
はっきりフィクションだと分かる部分もある。
それは、ミュージカルパート。
ただし、他のミュージカル映画とは見せ方が違う。
 
全て、セルマの空想、
頭の中の出来事として描かれる。
セルマの心の内を、
ミュージカル好きという設定と絡めて見せている。
ここだけ、ちゃんと固定カメラで
キレイに撮っている点も、
手持ちカメラと相まって、フィクション感を高めてる。
 
そうそう、音楽が入るのも、ミュージカルパートだけ。
ほかは、現場音で構成しているというか。
あまり作った音は使ってないんじゃないかと思った。
 
 
フィクションとノンフィクションのコントラストが美しい、
一風変わった作品が、
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』だと思いました。
 
終盤の官房を歩くシーンから、
めちゃくちゃ切ない。
目の見えないセルマが、
息子の眼鏡で安否を察する所とか、
いろいろ、こみ上げてくる。良い映画です。
 

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