本の感想 “フェイク・マッスル”

筋肉、筋肉はすべてを解決する!
主人公を応援したくなる、
人の死なない、ミステリーのお話。

フェイク・マッスル

フェイク・マッスル
著者:日野 瑛太郎

たった3ヵ月のトレーニング期間を経て、人気アイドル大峰颯太がボディビルの大会で
上位入賞を果たした。
SNS上では「そんな短期間であの筋肉になるわけがない。あれは偽りの筋肉だ」と
ドーピングを指摘する声が上がり、炎上状態となってしまう。
当の本人は疑惑を完全否定し、騒動を嘲笑うかのように、「会いに行けるパーソナルジム」を
六本木にオープンさせるのだった。
文芸編集者を志しながら、『週刊鶏鳴』に配属された新人記者・松村健太郎は、
この疑惑についての潜入取材を命じられ、ジムへ入会する。
あの筋肉は本物か偽物か。松村は、ある大胆な方法で
大峰をドーピング検査することを考え付くのだが――?真実を巡る潜入の日々が始まった。

出典:オビより

短期間でマッチョになったアイドルのドーピング疑惑を調査するべく、
潜入取材を試みる記者。

この導入から、楽しい。

主人公は三島由紀夫に心酔するファンであり、
たびたび、三島の言葉が引用される。

「精神の存在証明のためには、行為が要り、行為のためには肉体が要る。
かるがゆえに、肉体を鍛えなければならない。というのが、私の基本的考えである――」

出典:『フェイク・マッスル』P155より

心と体は、切り離せない。
そんな三島の信条を体現してくかのように、
肉体とともに精神も成長していく主人公。

気づいたら成長してるんですよ、
頼りない序盤から、あれよあれよという間に。。。
その成長っぷりに応援したくなる。

親戚のおじさんになった気分だ。
小説には文章しかないはずなのに、
終盤には、主人公がすごく大きくなってみえる。

主人公に降りかかるのは無理難題ばかり。
たとえば、同意なしに、他人の尿検査をするには?とかね。
これを、どう解決していくのか、ワクワクしながら読み進めてました。
犯人の仕掛けを解くミステリーではなく、
どういう仕掛けを施すか?という視点は、
見方をかえれば犯人視点の物語かもしれない。
そんな意味で一風変わったミステリー小説だと思います。

ちょっと、物足りなかったといえば、
ピンチのときは、もっとハラハラしたかった。
わりと、あっさり気味に問題が次々と解決していくので。
「ここから巻き返せるのか」って思うくらい、
四苦八苦してるほうが個人的には好き。
まあ、好みの問題ですね。

とはいえ、
さすがに、それは無茶があるぞって展開も、
一気に読めたのは、やっぱり読んでて楽しいから。

こういう独特の切り口のミステリーもいいですね。

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