最高に狂った、
最高にハイな映画の話。
時計じかけのオレンジ
データ
公開:1972年
製作国:アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
あらすじ
喧騒、強盗、歌、ダンス、暴力。
ロンドンで自分の欲望のまま日々を過ごすアレックス。
ある夜、強盗に押し入った家で、
女性を死に至らしめた彼は、懲役14年の判決を受ける。
しかし、とある治療法の被験者になることを条件に、
刑期の短縮を許される。
その内容は、洗脳によって
犯罪者の思想を矯正するものであった。
この映画の特徴的のひとつは、
独自の言語、隠語の数々。
「ビディーした」とか
「モロコを飲んだ」とか
パッと聞いても何語か分からない。
英語じゃないことは確かだ。
正解は、
ビディー → 見る
モロコ → 牛乳
これは、ナッドサット語という、
この作品独自の言葉づかい。
15年前、初めて「時計じかけのオレンジ」を見たとき。
何をしゃべってるのか、てんで分からなかった。
今、あらためて見ると、意外にも分かる。
前後の文脈とシチュエーションで、
なんとなく分かる。
細かい意味は人によってとらえ方は変わるけど、
大体似てくるんじゃないだろうか。
分かるようになるものだなぁ。
ナッドサット語は一種の若者言葉、スラング。
実際、アレックスたち子どもしか使っていない。
面白いのは、わざわざ言葉を作ったところ。
普通の若者言葉は時代とともに使われなくなり
死語となる。
見る時代によっては、ただ“ダサい”の印象で
終わってしまう。
それを、ナッドサットは、いつ誰が聞いても
「意味が分からん」という不変の印象を作ってる。
ぶっちゃけ、
超、超、ざっくり言ってしまえば、
「時計じかけのオレンジ」はヤンキー映画。
アレックスは世の中への反抗心、鬱屈した反発を
暴力として周りへぶつけている。
映画が進むと、
どんどん言葉が理解できてきて、
それに比例して、彼の衝動が見えてくる。
暴力行為の数々に、
クラシック音楽が使われてるのも衝撃的。
アレックスにとって、格調高い行為なのだろう。
そんな、バリバリやんちゃなアレックスは
殺人の罪で逮捕。
だが、とある治療の被験者に
なることを条件に、
刑期を短くしてもらうことになる。
瞼をクリップで固定し瞬きできなくして、
特殊な薬を打ち、
残虐な行為のある映画を延々見せ続ける。
ルドヴィコ療法と呼ばれる治療法だ。
アレックスが発狂するところは、
たぶん、めちゃくちゃ有名なシーンかも
しれない。
これにより、犯罪を起こそうとすると、
吐き気がする体にされてしまったアレックス。
晴れて、刑務所を出られることになったものの、
かつての自分の暴力による被害者たちから
仕返しを受ける。
しかし、治療によりアレックスは反撃できなくなったので、
なすがままにボッコボコ。
気持ちいいくらいボッコボコ。
因果応報を感じる部分なのだが、
スカッとする反面、
やっぱり酷い仕打ちには違いないので、
微妙にしこりが残る。
物語は、人に暴力をふるっちゃダメだぞ。と、
大事な教訓を伝えてハイ、オシマイ。
・・・と、ここで終わりそうなものの、
さらに、深いところへ連れていかれる。
ルドヴィコ療法を受けた唯一の被験者である
アレックスを政治利用しようとする輩が現れて・・・。
輪廻のように、
アレックスの思考がグルグル回る奇妙さと、
音楽の使い方と
色使いのハイセンスさ。
それが面白い。
ちなみに、タイトルの「オレンジ」だが、
ナッドサット語的には“人”という意味も
含まれているとか、いないとか。
「時計じかけの人」と考えると・・・。
若者は、結局大人のいいように支配される。
そんな暗喩が入っているような気もする。
とりあえず、
辛い映画を見たらルドヴィコ療法と思うことにしよう。
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