“読書感想”『オリジン・ストーリー』

書籍
オリジン・ストーリー (単行本)
著者:デイヴィッド・クリスチャン, 翻訳:柴田 裕之

私たちは、何者で、どこから来て、どこへ行くのか。
宇宙、地球、生命、そして人間の起源を、
「エネルギー」と「情報」を軸に語っている。
 
いわく、エネルギーは変化を引き起こし、
情報は変化を導く。
だそうだ。
 
「人間は集合知で発展した」って話が、
言われてみるとそうか。と。
生物が何万年かけて進化し、乗り越えてきた問題を
知識の積み重ねで何百年に短縮した。それが人。
 
この着眼点はあんまりなかったなぁ。
ちょっと、本書をざらーっと振り返ってみる。
 
 
本書でエネルギーとは・・・
純粋でランダムで無形。
「何か」をしたり、「何か」を変えたりする潜在的な能力と
とらえている。
そもそも「エネルギー」はいつ誕生したのか。
大大大前提として、宇宙の起源ビックバン。
直後に「エネルギー」が生まれた。
無から宇宙が生まれる、、、これがさっきの「何か」ですね。
 
物質は著しく圧縮されたエネルギーの形態だそう。
まあ、よく考えれば、世の中のものすべて原子の集合体なのですから、
我々人も、エネルギーの一形態なのかもしれない。
ちなみに、宇宙に存在する全原子の
ほぼ4分の3が水素で残りはヘリウムだそうです。
 
宇宙の次はもちろん星の誕生。
中でも恒星は、自らエネルギーを放つ存在。
分かりやすくいったら、太陽ですね。
そんなエネルギーの塊、太陽の恩恵を受けて地球に誕生したのが「生命」
つまり、生物という存在。
 
生物は、自らエネルギーを作ることができないため、
何かを食み、エネルギーを得ている。
これが、恒星と違うところ。
そして、生物の中でも、光合成・・・、
太陽光のエネルギーを利用できるようになった存在が生まれ、
それを食べる存在が生まれ、またそれを・・・。と、
いってしまえば、巨大な太陽光エネルギーを使い、
私たちは、何かを成すことができるんだと。そう語っているわけです。
 
 
何かの変化が起こるとき常に「エネルギー」の存在がキーとなっている。
さらに、もうひとつ大事なことがあります。
「エネルギー」をどう使うか?この大事な使い道を決めるのに必要なのが
「情報」の存在
 
 
生物はもともと情報食者である。
なんだか、仰々しい四文字だけれど、至ってシンプル。
火の前にいれば、「熱い、遠ざかろう」と思う。
火は熱いという情報を得て行動を変える。それだけのこと。
 
生物が大型化、複雑化すると
環境についてより多くの情報が必要となった。
その情報を処理するのは、もちろん「脳」
人間は他の生物に比べて、脳が大きい。
さまざまな情報を処理するために。
たとえば、人が噂話に敏感なのは、誰に勢いがあり、誰が落ち目なのか。
関係を常に把握しておくことで、自分の身を守るためだといわれている。
 
人間は、情報を次々と生み出しては共有し、それを使って
ますます多くのエネルギーと資源の流れを利用する。

例えば、船を使い新しい場所へのアクセスを可能にしたり、
キャッサバの毒を抜いて食べられるようにしたり、
電子ネットワークを構築したり、などなど。
 
人間の最大の強みは、ここにある。
個人の力では成し遂げられないひとり、ひとりの見識を共有し、
さらに何世代にもわたって幾百万となく情報を蓄積できて初めて実現する。
これを「累積文化進化」というらしい。
可能にしたのは”言語”である。
人が持つ、強力なコミュニケーションツール。
 
このツールを使ううちにコミュニティが生まれ、
それが、村となり、街となり、国となった。
 
人間のコミュニティで画期的だったのは農業の誕生。
農業の生産性が上がるにつれ、人口も増えていった。
ただ、生産性があがることで、必要量を上回る余剰が出た。
余るなんて、そんなことなかったので、
これが新しい富の形となり、ある問題を提起した。
「誰がこの富を支配するのか」
 
生産性の向上によって、全員が耕作に携わる必要がなくなり、
社会に新しい役割が生まれた。
神官、兵士、哲学者、そして支配者などの専門職。
分業が新たな社会の役割を作る。
専門職は自分の食を作れないため組織へ依存していくことに。
 
専門化することは新しい技術の発達を促す。
たとえばメソポタミア文明の初期では、簡素な陶器が作られており、
農業の片手間で作ったことがうかがえるそう。
しかし、6000年前から、ろくろを備えた作業場が見られるようになり、
陶器も職人の手による品物へとなった。
 
専門職によって生まれる道具の数々。
人々の社会への依存が強まるにつれ、専門職に従事する人は次第に影響力を強めた。
農家も農具を買うために、社会へと依存していった。
やがて労働が賃金労働になってくると、
専門化が進むことで格差が目立つように。
専門職は単独では生きられない。だから強固に統合されている。
 
専門、分業により、
社会に依存しなければ、明日食べるものもないのだ。

 
 
ここで、本書より引用

集合的学習は、高密で複雑な人間社会を生み、
変化を加速させ、生物圏の支配権をしだいに人間に与えることで、
新しい形のダイナミズムを作り出した。

P363より引用


農耕の誕生により、社会が生まれた。
農耕には、エネルギーがあったわけです。
これに次ぐイノベーションが生まれます。それが「化石燃料」
太陽エネルギー以外の強力な資源。
これにより、人口がますます増大する。
 
蒸気機関が船や電車などに利用され貿易も活性化。
さらに、テクノロジーは戦争にも利用され、
戦争はイノベーションを否応なく推し進めた。
窒素肥料の開発もその1つ。
戦争により、天然肥料が不足していた中、生まれた人口肥料である。。。
 
 
ざらーと、本書を振り返ってみましたが、
「エネルギー」と「情報」がイノベーションに大事なこと。
そして、おそらくこれから先も重要になるのが、この2つ。
 
なんだか、この視点から歴史を振り返ったことなかったから、
ましてや、起源ですからね。
新鮮な、気持ちになりました。
 

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