読書感想“シャーロックホームズの凱旋”

書籍

謎を解かないホームズ!
異色のオマージュ小説のお話。

シャーロックホームズの凱旋

シャーロック・ホームズの凱旋
著者:森見登美彦

「天から与えられた才能はどこへ消えた?」舞台はヴィクトリア朝京都。
洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが……まさかの大スランプ!? 
謎が謎を呼ぶ痛快無比な森見劇場、ついに開幕!

出典:中央公論新社 公式サイトより

本をめくって早々、「洛中洛外」と、
およそ、ホームズの舞台「ロンドン」とはかけ離れた言葉が飛び出す。

それに面食らってると、寺町通やら下鴨神社。
たたみかけるように出てくる地名から、
物語の舞台は京都であると、認識させられていく。
「ほうほう、日本を舞台にしたホームズか。」
なんて、思っていると、登場人物はちゃんと
ホームズシリーズに出てきた、そのままの名前。

てっきり舞台を日本にするからには、
ワトソンなど人物は、当て字の和名になって
日本版「緋色の研究」とか、そういう物語にするのかと思っていた。

しかし、舞台が京都になっただけで、
京都の地に、カタカナの名前の登場人物が息づく、
かなーり奇天烈な世界観だった。
そもそも日本名の人物は一切出てこない。

当然のように、赤毛連盟の話が出てくるのだけど、
日本で「赤毛」って、どれくらい異様なことなんだろう。
ただ、登場人物は普段通りにしているわけで、
おかしいのは、読者である私だけ。

ある種の疎外感みたいな、この奇天烈さに戸惑いつつも、
物語の世界観に慣れたころ。
さらに、これを逆手に取った終盤の大仕掛けが待っている。

これがすごい。
最初に感じた「おかしいのは私だけ」が、
物語とリンクしていく。
創作と現実が溶け合っていく、第四の壁の突破の仕方!
森見先生は、おそろしい。

ただのIFとか、ホームズのフォロワー作品にはおさまらない
森見ワールド全開作品でした。

劇中、ワトソンが自身の心情を吐露するところは、
コナン・ドイルのメタファーに思わせて、
森見先生ご自身のことを指しているのかもしれない。

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