【動画編集の参考本】「ファクトフルネス」世界の切り取り方

書籍

突然ですが、あなたはチンパンジーより劣ると言われたら
どう思いますか?

試しに次の3つの問題を考えてみてください。

Q1_現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょうか?
A 20%
B 40%
C 60%

Q2_国連の予測によると、2100年には今より人口が40億人増えるとされています。
その大きな理由とは?

A 子供(15歳未満)が増えるから
B 大人(15歳から74歳)が増えるから
C 後期高齢者(75歳以上)が増えるから

Q3_世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して
予防接種を受けている子供はどのくらい?
A 20%
B 50%
C 80%

分かった人はいましたか?
正解は、下記の通り

1問目の答えはC:60%
(日本人正答率7%)

2問目の答えはB:大人が増えるから
(日本人正答率10%)

3問目の答えはC:80%
(日本人正答率6%)

ちなみにチンパンジーの正答率は33%だ。
あっ、私は全問外しました!

こんな衝撃の事実を突きつけてきたのが今回紹介するこちらの本。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 [ ハンス・ロスリング ]

ファクトフルネス=事実に基づく世界の見方
つまり、「真実を見極めるコツが分かる」
著者は医師でもあるハンスさん。

本書では、先ほどの3問を含めた全13問出題。
全て3択です。
ゆえに、チンパンジーのように人間の社会システムを全く知らなくても
ランダムに選んで4問は正解できる…はず。

しかし、14ヵ国1万2000人に実施したクイズの結果は
平均正解数なんと12問中2問。
80%の人がチンパンジー以下でした…。

これは、どういうことかというと、
著者ハンスさんいわく、
「知らないのではなく、間違った知識を知っているからでは?」

そう気づきを得た、ハンスさんがどうすれば世界を正しく見ることができるのか。
追求し続けたものが、この1冊に詰まっています。
ありがたい話ですね。

勘違いを引き起こす要因として
ハンスさん曰く、人間には10個の本能と言ってよい「思い込み」が
あるそうです。

それが、コチラ

1「分断本能」…様々な物事を2つに分けないと気が済まない

2「ネガティブ本能」…物事のポジディブ面より悪い面に注目する

3「直線本能」…世界人口はひたすら増えるという思い込み

4「恐怖本能」…危険でないことでも恐ろしい

5「過大視本能」…目の前の数字がいちばん重要だ

6「パターン化本能」…物事をパターン化し全てに当てはめてしまう

7「宿命本能」…全てはあらかじめ決まっていると思う

8「単純化本能」…世界はひとつの切り口で理解できる

9「犯人捜し本能」…悪いことが起きると単純明快な理由を探す

10「焦り本能」…今やらないと次はない

ざっと触りを聞いただけでも、あるあると感じませんか?
結構自分にはグサグサささりました。

その中でもハッとした3点を要約してみました。

恐怖本能

自然災害で亡くなる人の数は過去100年間でどう変化したのでしょうか。

答えは25%。4分の1になったそう。
しかし、この事実は見落とされがちで、どの災害も史上最悪であるかのように報道し続ける。
例として、2015年ネパールで起きた地震では10日間で9000人が亡くなった。
一方で、同じ10日間で汚染された飲み水による下痢が原因で9000人の子供が亡くなっている。
だけど、汚染水を報道することはあまりない…。

紛争やテロ、飛行機事故も長期的な目で見ると実は死亡者数は毎年減ってきている。
目の前の「悪い」ことに注目しがちで、長期的な「良い」ことには意識を持っていきにくい。

ハンスさんが警鐘を鳴らすのは、そんな恐怖に目がいきがちな人間の本能。
太古の昔、狩猟生活をしていたころは、恐怖を感じる本能が、
事前の危機を早めに察知して、生き延びることができた。
けれど、今はそれが足かせになりつつある。

全死亡者数の
0.7%を占める殺人
0.1%を占める自然災害
0.05を占めるテロ
0.001%を占める飛行機事故

どれも1%に満たないモノばかり。

「世界は危険」というニュースは広く効果的に発信されるようになったけど、
現在、人類史上まれにみる「平和」である。ちょっと変じゃないだろうか。

●対策
恐ろしいものには自然と目がいってしまうことに気づくこと。
リスクは「危険度」×「頻度」で決まる。
行動する前に落ち着こう。

犯人捜し本能

物事がうまくいかないと、誰かの仕業だ!と思うことはないでしょうか。

はい、私ですね。
何か仕事上で自分が責められることがあれば
「だから言ったじゃなえかよ」と思いがちです。

個人が社会を動かしていると考えれば、社会は得体のしれないものだという
恐怖心を取り払える。

それは逆に、上手くいっている時も同じで、
誰かひとりの功績…単純な理由を見つけたくなる。
でも、たいていの物事は複雑って知ってますよね。

世界を変えたいのなら「犯人捜し本能」は役に立たない。

なぜなら犯人には、その人の好みが現れます。

よくターゲットにされがちな悪者とは…
「ビジネスマン」
「ジャーナリスト」
「ガイコクジン」

特に日本では「マスゴミ」と揶揄されがちな
ジャーナリスト、メディアの方々。
でも、彼らは物事をドラマチックに見せることができるけど
正しいことを知っているとは限らない。
同じチンパンジー以下の人間ですからね。
悪気があるわけではないんですよ。
だからこそ中立ではありえないし、中立を期待するべきではない。

ハンスさんはこう言っています。
「物事がうまくいかないときはシステムを見直した方が良い」
「犯人を見つけると人間は考えるのを止めてしまう」

●対策
誰かが見せしめに責められていることに気づく。
⇒誰かを責めるとほかの原因に目が向かなくなり、将来同じ間違いをする。
犯人ではなく原因を探す。
⇒責めるべき人やグループを捜すより、複数の原因やシステムを理解する。

焦り本能

いつやるか?いまでしょ!明日じゃ遅すぎる。

…なんて言葉をどこかで聞いたことは?
もう次はない―と思わせるのが焦り本能だ。
いますぐ決めろと言われると批判的に考える力が失われがち。

でも、今じゃないとダメなんてことはないし、
チャンスは一度きりじゃない。

ハンスさんの体験談で、
かなり印象深かったのが次の話。

モザンビーク共和国のある村で感染症対策のために派遣された時、
急いで対策をしなければと焦ったハンスさんは、
道路封鎖を行い、広がるのを防いだ…はずだったのですが、
一部の村人たちは、生きるため、商売をするために漁船で市場まで向かい、
波にさらわれ、全員おぼれて死んでしまったという話だ。

対策が完全に裏目に出てしまい、呆然自失となってしまったそう。

焦って事をなしても、良くない結果が待っている。

2014年アフリカでエボラが流行した時も
エボラへの恐怖が増すにつれ、感染疑い者が増えていった。

別の理由で亡くなった方たちもエボラ疑いとしてカウントされ、
実際の感染者数と大きな差があったそうだ。
ソフトウェア開発者は役に立たないエボラアプリ(感染地域マップなどの情報発信)を
開発し続け、それが実際に効果があったのか測る人はいなかった。

●対策
今すぐ決めなければ!と思ったら自分の焦りに気づく
正確なデータにこだわる。
未来は不確かであることを認めない予測は疑う。
(最高と最悪の2つしかないシナリオなど)
過激な対策に注意する。

おわりに

なぜ、この3つかというと、
現在2021年の状況にかなり似ているのでは?と思ったからです。

当たり前かと思うかもしれませんが、
当たり前すぎて意識の外にありがちな10個の心得。
それをあらためて認識する1冊です。

最後に残りの7つの対策をサラッと軽めにご紹介。

「分断本能」
●対策:人、国、グループには最上層と最下層の2つがいる。…が
大半の人はその中間にいる。
高い所から低い所を正確に見るのは難しい。
どれも同じくらい低く見えても実際は違う。

「ネガティブ本能」
●対策:物事がよくなったとしてもそれについて知る機械は少ない。
長期的には進歩が見られても短期的な後退のほうが取り上げられやすい。
「悪い」と「良くなっている」は両立する

「直線本能」
●対策:グラフはまっすぐになるという思い込みに気づく
実際は、直線のグラフが珍しい。(S字型など)
ひたすら増え続けるものはありえない。

「過大視本能」
●対策:大きな数字はそのままだと大きく見える。
必ず何かと比較すること。
国や地域を比較する時は「ひとりあたり」に注目

「パターン化本能」
●対策:間違ったパターン化をしないように分類を疑う
集団が大規模の場合、小さく正確な分類に分ける。
自分以外はアホだと決めつけない。

「宿命本能」
●対策:いろんなものが変わらないようにみえるのは
変化が少しづつゆっくり起きているから。
小さな進歩を追いかけ、
おじいさんやおばあさんに話を聞いて今との違いを確かめる

「単純化本能」
●対策:ひとつの視点だけでは世界は理解できない。
自分の肩入れしている意見の弱点を探してみる。
単純な答えには警戒し、知ったかぶりをやめる。

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