読書感想 ″白の服飾史″

書籍

婚礼のとき身に着ける色も
死者にまとわせる色も同じ色。
 
その歴史を考察する本。

白の服飾史:人はなぜ「白」を着るのか

白の服飾史:人はなぜ「白」を着るのか
著者:ニーナ・エドワーズ 翻訳:高里ひろ

 

白い服って式典のときには気品を演出するけれど、
普段着にはシンプルすぎて敬遠されがち。
 
こうして考えると、
1つで矛盾する白とは奥が深いのかもしれない。
 
 
白は汚れやすく、白さを維持するのに手間暇がかかることから、
中世では富の象徴だったらしい。

なぜかというと、クリーニングスタッフを
たくさん雇うことになるから。
白い服は普通に洗わっても、白く保つには不十分で、
奴隷が足で踏み洗いする必要があった。
 
白は入手も維持も難しかったし、しかもすぐシミになり非実用的。
 
そんなに大変な白い服をまとうことは、
自分で洗濯しなくてもいいことを暗に示してもいた。
ローマでは裕福な家に生まれた少女は
結婚するまで白い服しか着なかったそう。
 
では、反対にカラフルな服はどういうイメージがあったかというと、
中世において外国の制服によってローマに連れてこられた若い女性たちは
生まれ故郷のカラフルな服を着て奴隷の娼婦になることもあり、
ひるがえって、白は娼婦ではない女性という意味もあったとか。
 
とかくキレイに保つのが、困難な色、白!
儀式的重要性をもったのは、
素材を白くすることの難しさと費用が理由の1つだといわれている。
 
だから無地の白シャツは、男性のパロメーターにもなっていたようで、
それが清潔か、汚れているかで
着ている男性が金持ちか、地位が高いか、
変わり者か、落ちぶれたのか、見分ける目安にしていた。
白は上流階級の証でもあったというわけ。
(ちょっと余談。近現代で看護師や医者が白い服を着る理由は、
煮沸洗濯できる部分も大きかったそう。
色付きは高温の湯で洗うと染料が落ちて繊維をダメにしてしまう。)
 
どことなく、位の高いものになっていったことを考えると、
人間社会で、最も高いと思われる、神さまのイメージはどうだろう。
たいてい白をまとってないだろうか。
しかも、このイメージは、宗教、国に関係なく、共通している気がする。
 
白の持つイメージは、神にも紐づいて
スポーツのユニフォーム、科学者や医学者の白衣
そのほか制服に使われると、格式高さを受ける。
余談だけど、ウィンブルドンはウェアを白にすることと、
義務付けられている、唯一のメジャー大会。
 
 
いっぽうで、逆のイメージもある。
死者に白い服を着せるのは、
色の無い服は現世の欲をすべて捨て去ることを表している、とか。
つまり、価値とは無縁になるわけ。
 
世界の一部では、女性が白い服を着ることはよくないこと。
と考える文化もある。
その理由は、女性の虚栄心やほかの女性に対する嫉妬という
意味が白にはあるらしい。
 
 
1つで、どちらの意味をもってる色は、なかなか珍しい。
例えば赤とか、黒には、
そこまでの解釈は生まれなかったかもしれない。
 
というわけで、「白の服飾史」でした。
そういえば、会社に行くときのYシャツって、
なんで白なんだろう?とか、
普段当たり前すぎて、スルーしがちなポイントだったので、雑学として面白い。
読んで知ったけど、白いカツラブームとかね。変な時代もあったんだなぁ。
 

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