読書感想 ❝世界史を大きく動かした植物❞

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世界史を大きく動かした植物

世界史を大きく動かした植物
著者:稲垣 栄洋

コムギ、イネ、チャ、トウガラシ…。
人類の争いの歴史に植物アリ。
 

この本、かなり、興味深い話ばかりで、面白かったです。
内容を少しばかり書くと・・・


 
人類史を支えている世界三大穀物、
トウモロコシ、小麦、稲。
 
小麦、稲は農業の生まれたキッカケにもなった作物。
トウモロコシは、世界で一番栽培されていて、
現在の人間社会を支えています。
食糧以外にも、家畜の飼料になったり、
段ボールの材料になったり、バイオ燃料、ビール、
お菓子の甘味料や、特定保健用食品の成分にも、
トウモロコシ由来のものがある。
まさにトウモロコシ無くして文明無し。
そういっても、過言ではないほどの作物。
 
この3種の特徴は種子。
 
野生の植物は種子が熟すと、バラバラと種子をばらまく。
その中で、種子が落ちない突然変異が、はるか昔に発見されます。
その植物とは、小麦。

植物としては致命的な特徴。しかし、人類にとっては光明。
なにしろ、種を食べられるから!
「これを増やせれば食べ物に困らない」農業の始まり。
 
種子の優れた点は、ただ食べるほかにも保存ができること。
狩りの成果にはバラつきがあるけれど、安定して食糧が確保できます。
保存がきくことによって蓄えられるようになり、それが「富み」となった。
「富」によって格差が生まれ、人々は争うようになっていく。
例えば、日本では稲作りが盛んだけれど、
戦国時代では、富の基準を米の生産量を表す「石高」で評価していた。
貨幣統一がされていない時代、地域によってさまざまな金銭が流通していたため、
なにより米が信用できたそう。
 
そして、トウモロコシ。
トウモロコシの種は、あの黄色い粒の中にある、
しかし、種をまく機能がまるでない。さらに、明確な祖先種もない。
いかにして、本来の植物としての機能を失ったのか?
一説には、宇宙からやってきたんじゃないかと、言われたり、
植物学者のあいだでは「怪物」と呼ばれていたり、謎多き作物。
 
 
農業は、食べるものを安定して獲得するため生まれたものなので、
自然環境が厳しい場所で発展してきた。

ということは、植物でも生育に厳しかったんじゃないか。
そう考えると、作物を育てる行為は、
実は人間が植物に利用されている結果なのかもしれない。
なぜなら、植物の目的は子孫を残すことなのだから。

 
「富」として、植物が関わった事例も少しばかり書くと、
有名なのは、大航海時代に大きく関係した「コショウ」
食物の長期保存を可能にしたコショウは、
陸路で運ぶと関税など、コストがバカにならないため、
海から、航路開拓しようと、ヨーロッパの動きが活発になりました。
 
この航路開拓によって、
「トウガラシ」「ジャガイモ」「トマト」などなど、
本来、その地域では採れるはずのなかったものが流通し、
流通した植物によって、また、新たな経済が生まれていきます。
 
例えば、インド原産の「ワタ」
ヨーロッパで起こった産業革命に大きく関係していきます。
綿織物の生産を効率よく行うため生まれた機械工業。
大量生産が可能になれば、材料のワタも大量に必要。
大規模に生産するため、労働力として目を付けたのが奴隷。
この奴隷制度は、南北戦争にも大きく関係していく。
 
 
もうひとつ、有名なのが、
世界三大飲料の一つでもある「チャ」
昔の中国では薬として、扱われていて、
産業革命時には紅茶が好んで飲まれていた。
イギリスでは赤痢菌など水を媒介にする病気の心配があったため、
抗菌成分を含む「チャ」で病気のまん延を防いでいたとか。
イギリスが植民地であるアメリカへ紅茶の輸入に重税をかけていたため起こったのが、
ボストン茶会事件。
 
この事件は、イギリスにダメージを大きく与えていきます。
元々、紅茶を清(中国)から大量に輸入していて、貿易赤字を抱えていた。
アメリカとの貿易が出来なくなって、赤字が拡大し続けるイギリスは
ケシの実を育てさせて、アヘンを作り、清国に売りはじめ、
後のアヘン戦争勃発へと繋がっていきます。
 
 

植物は文明を生んだキッカケにもなったし、
争いの火種にもなった。
ただ、争いによって、本来の生育地を飛び越えて、
世界中に拡散していく、植物。
と、考えると、けっこう強かだよね。

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