ドキュメンタリーを見る目が変わる!
作る人。楽しむ人にとっての指南書の話。
ドキュメンタリー・ストーリーテリング
事細かに、制作工程を語る・・・
というか、それ以前の、
制作資金調達の話から語っているので、
結構、専門書に近い1冊。
その中から、印象に残ったものを
ちょろちょろ語りたいと思います。
先に、ドキュメンタリーの意義を
お伝えしましょう。
本書のなかで、ドキュメンタリー作家の
スーザン・キムさんが語られていた言葉です。
感銘を受けたので、引用させて頂きます。
よくできた作品というのは、
受け手との対話を引き出すものです。観る者に思考を促し、何か言いたくさせるもの。
出典:P381より引用
だから、必ずしも答えがきれいに
まとめられているとは限りません。
ドキュメンタリーとは、
人が作る以上、作り手の主張が絶対入ります。
そんな、作り手と観客の会話の道具が
ドキュメンタリーなのかもしれません。
主義主張を言うときは、
物語にすることが、
一番相手に納得されやすい手法です。
ビジネスの現場でも使われてますね。
本書では、物語るための、
基本的なテクニックをいくつか紹介しています。
例えば、「三幕構成」
内容を始め、中、終わりに分けて語ること。
・登場人物や、問題など
情報の露出をする「話のお膳立て」があり、
・観客の期待を裏切り、どんでん返しがあり、
筋立てに「捻りが加えられ」
・確執や問題を増幅し、
緊張感を高めに高めて「決着がつく」
フィクションの劇映画でよくやる手法ですが、
物語る点では同じなので、
もちろんドキュメンタリーにも
適応できるのです。
そして、良い物語の条件についても
述べられています。
それは以下の5つ。
・受け手が共感できる人についての話か。
・その人は、何かを何としてでも手に入れようとする。
・その何かは簡単に手に入らないが、不可能ではない。
・可能な限り受け手を巻き込み、感情に訴えかけているか。
・受け手を納得させ満足させて終わっているか。
ざっくり大まとまりだけを
書いてきましたが、
ここからさらに細かい部分については
本書に記されていますので、
そちらをご覧ください。
上記の要素は大事なのですが、
良い物語にするめに
最低限守らなければならないこと。
大前提があります。
それは・・・
ウソをつかない、
一方的な主張を押し付けない。
ということ。
「ウソをつかない」は分かるとして、
一方的な主張を押し付けないのは、
どうすればいいのか。
その一つがナレーションの量です。
どうやら、
アメリカでは、ナレーションが多いのは
美しくないとされているそう。
一口にナレーションといっても、
役者が言葉で語るものから、
文字だけで語るものもあり、
(よくあるのは黒味に白字)
形態はさまざま。
ようは、語りすぎて、
見る人に考える余白を与えていないもの。
それは、ドキュメンタリー作品というより、
「お勉強」になってしまうのだとか。
もう、こうなってくると、
ドキュメンタリーと芸術の境目も曖昧になってきますね。
奥が深い分野だ・・・。
そして、そう考えると、
日本のドキュメンタリーの多くは、
「お勉強会」になっているのかもしれない。
・・・とまあ、
「ドキュメンタリー・ストーリーテリング」は
いろいろとドキュメンタリーを見る目が
変わる1冊でした。
コメント