読書感想 “一九八四年 [新訳版]”

書籍

最近、昔のSF小説にハマってます。今回も激渋なお話。

一九八四年 (ハヤカワepi文庫)
著者:ジョージ・オーウェル、 高橋 和久 翻訳:高橋和久

〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する全体主義的近未来。
ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、
歴史の改竄(かいざん)が仕事だった。
彼は以前より、完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いていた。
ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、
伝説的な裏切り物が組織したと噂される反政府地下活動に
惹かれるようになるのだが・・・・・・。
二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場!

出典:裏表紙より

言葉の選択肢を狭めれば狭めるほど、
人は悩まなくなり、政府が御しやすくなる。。。

理屈が通ってて、怖いSF小説でした。

例えば、
「素晴らしい」「優れた」「良い」などなど。
同じ意味の言葉はたくさんあるけれど、“全部「良い」だけで十分だよね。”
として、「良い」という言葉だけ残すのです。
「良い」の最上級は「超良い」「倍良い」とかにすれば、
効率がいいだろう。という理屈です。
次第に、反対の意味の言葉にも適用され、
「悪い」も「非良い」にすれば、言葉の選択で迷わなくて万事OK!となる。

そうして、辞書から「悪い」という言葉が消えたとき、
人々から不満の感情が消えていく。

なぜなら人は言葉でものを考えるから。
言葉の差異に悩まなくなり、想像力を働かせる力が弱まり、
ついには、悪い感情はなくなり、良い感情だけが残る。
 
現実でも、戦時中はこんな言論統制はあったはず。
日本でいうと第二次大戦下で、英語が規制されたように。
だから、妙にリアルでぞわっとする。

そうして、思案する必要のなくなった民衆を支配する政府と、
上級国民の構図がこの作品で描かれる。

支配の手口が、かなーり徹底していて、
歴史書を書き換えることによって、過去の改竄はいうにおよばず。
音楽や本を含めたエンタメも、
大衆の好みに合わせて最適化されたものを機械が自動的に生成し、
民衆に配ることで、行動・思考を制御する。

そうして支配下に置く民衆のことをプロールと呼び、
プロールに配るエンタメを「プロールのエサ」と呼ぶ。
エサだぜ。エサ。

このあたりは、メタ的にみると作者のジョージ・オーウェルの
売上重視のエンタメに対する思いみたいなものもあるんじゃなかろうか。
 
 
無条件に、政府は素晴らしいという感情に置き換えていく手法が巧妙で恐ろしい。
特に、主人公にかけられる洗脳のシーンは、トラウマになる。

これは、あくまで空想の物語だけれど、
支配の本質みたいなのが、詰まったSF小説でした。

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