“読書感想” 新しい世界を生きるための14のSF

書籍

SFの裾野は広いなって話。

新しい世界を生きるための14のSF

新しい世界を生きるための14のSF (ハヤカワ文庫JA) [ 伴名 練 ]

いやぁ、やっと読み終わった。
何しろ700ページ越えの大ボリューム。
読後感もヤバいヤバい。
 
 
実験的なアプローチも多く、
読み方にも謎解き要素があって面白かったです。
 
1篇1篇は、
70ページ前後なので、
するすると読めるし、
どれから読んでもOK。
 
 
以下収録作品たち。

ー-------
 
●Fimal Anchors 作:八島 游舷
 
「ナイトライダー」というドラマを
知っているだろうか?
特殊な機械により、人と
コミュニケーションが取れるようになった車が登場する、
SFドラマだ。
 
そんなナイトライダーを彷彿とする、
車に搭載されたAIの話。
 
人がAIを使うのか?
AIが人を使うのか?
 
わずか0。488秒の手に汗握る
サスペンス。
 
おそらく、映画好きなら楽しめる。
 
 
●回樹  作:斜線堂 有紀
 
恋人の死体を盗んだ女性の話。
なぜ、盗んだのか。
そして、盗んだ死体をどこへやったのか。
 
話が進むたびに、明かされる謎が、
なかなかズシリと心に響く。
 
  
何をもって、人は死ぬとするのか?
 
生命活動を止めた時?
いや、それはもしかしたら、
愛されなくなった時かもしれない。
 
「愛」を現象として捉えた、
なかなか、渋い作品。
 
あ、あと百合です。
 
 
●点対 作:murashit
 
とある双子の話。
お互いの意見が食い違っていて、
どこか「羅生門」を思わせる。
それだけなら、よくあるけれど・・・。
 
最初に読んでて面食らった作品。 
「これ、どう読めば良いんだ?」って。
 
途中で、読み方が分かった時のアハ体験が
気持ちいい。
 
それだけでなく、
語り部が途中で入れ替わるなど、
文章でしかできない
変わったギミックが満載なので、
「謎とき」が楽しい。
 
 
●もしもぼくらが生まれていたら 作:宮西 建礼
 
宇宙へ行かない、宇宙青春もの。
 
隕石衝突という危機に対して、
どう、回避するのかシミュレーションが
展開していく。
 
これが、すごく現実的なアプローチで、
読んでて、ワクワクする。
実際にありえそうと思って。
 
かつ、奔走するのが高校生っていうのも、
青春感あって良いっす。
 
ものすごくリアリティがあるいっぽうで、
パラレルワールドでの話になっていて、
現実の歴史と、ちょっぴり違ってたりする。
 
何が変わっているのかは、言えないけれど。
これがまた、良い感じでサスペンスになってる。
 
 
●あなたの空が見たくて  作:高橋 文樹
 
ショート・ショート。
 
惑星間旅行というのが実現するとしたら・・・。
 
必ずしも「良い旅」になるとは限らない。
淡々とした語り口に現実味を感じる作品。
 
 
●冬眠世代 作:蜂本 みさ
 
途中まで、普通の人間の話だと思って
読んでたら・・・な話。
 
なるほどなぁ。だから「冬眠」か。
 
短い話ながら、
三世代にまたがって徐々に語り部が変わる、
ギミックは好き。
 
 
●九月某日の誓い 作:芦沢 央
 
超常の力。それも人の死を自由にできる力を巡る、
サイコ・サスペンス。
 
全編にわたって、
ある種「人間の闇」が映し出される展開は、
ハラハラする。
 
誰かと違うことは、それだけで脅威なのだ。
 
 
●大江戸しんぐらりてい 作:夜来 風音
 
日本独自の暦、大和暦を作った渋川春海。
天文学、数学にも精通し、
日本初の地球儀を作ったと言われているスゴイ人。
そんな人物が、人力パソコンを作っていたら?

という歴史改変モノ。
 
恥ずかしながら、
フィクションのキャラクターかと、
勘違いしてしまった。。。
 
この渋川春海は、囲碁棋士としても活動します。
 
棋士を志した裏には、
人力パソコンが深く関わっていた―。
 
 
●くすんだ言語 作:黒石 迩守
 
人間は、思ったより言葉に頼って生きている。
では、その言葉とはなんなのか?

言葉は共通の定義の上で成り立っているもので、
そこに、自己が入り込む余地は実はない。
 
例えば、リンゴ。
リンゴの定義が人で違っていたら非常に困る。
だから、共通の定義でなければならない。
 
しかし、みんなの共通言語に、
自己が紛れ込んだら、どうなってしまうのか。。。
 
とある、翻訳システムを巡る、
ダークなミステリー。
 
 
●ショッピング・エクスプロージョン 作:天沢 時生
 
ドン、ドン、ドン、ドン・キー。
ドン・キホーテ♪
というメロディが聞こえてきそうな、
どこか懐かしい、
ウエスタン・アクション。
 
壮大なスケールなんだけど、
なじみのあるディスカウントショップが
モチーフとなっているため、
どこか、シュールさも感じる。
 
 
●青い瞳がきこえるうちは 作:佐伯 真洋
 
仮想現実が進行した世界。
AR/VRの技術により、あらゆる人が
平等にスポーツで競い合うことができるようになった。
 
それは、ハンディキャップさえも乗り越えて。
 
眠りから目覚めなくなった、
天才卓球プレイヤーである双子の兄を救うため、
仮想現実の世界で、卓球に挑む盲目の弟。
 
SFでスポコンものって、
めずらしい気がする。
 
 
●それはいきなり繋がった 作:麦原 遼
 
ある日、本当に突然、
なんの脈絡もなく、
鏡映しのような、別世界と繋がる。って話。
 
異なる世界を流通させるビジネスが生まれ、
交流が生まれ・・・。
 
面白いのは、感染症が流行るところ。
このとき、異世界の人間には感染しないことが分かる。
 
生命の仕組みが、そもそも違うからということだが。
この事実から、もう一つの世界には
「感染症がない!安全だ!」となって
こぞって、異世界に避難しようとしたりする。
 
明らかに、コロナ禍で右往左往していた、
現実を揶揄している部分。
あの時も、なぜかコロナが流行していない
別の土地へ行こうとする人が多数現れた。
 
そんな中、異世界でも感染症が流行るのだが・・・
 
今だからこそ、楽しめるSFかもしれない。
 
 
●無脊椎動物の想像力と創造性について 作:坂永 雄一
 
蜘蛛の群れに支配されつつある人間社会を描く、
これまたダークな話。
 
人間が生み出す構造物は、
実は、生物の持つ機能の一部である。
 
だとすれば、生物にもクリエイティビティが
あるのではないか?
 
蜘蛛の創造性に蹂躙される人類が行き着く先とは?
めちゃくちゃ続きを妄想したくなる作品。
 
 
●夜警  作:琴柱 遥
 
ディストピアもの。
 
舞台は、とある港の村。
ここの村にはある決まり事があった。
 
それは、子どもたちが、当番制で
寝ずに夜空を眺め続けること。
 
そして、流れ星を見つけたら
必ず「お願い」をしなければならないこと。
 
だんだん、世界の真実が明らかになるにつれ、
子どもたちのやっていることに、
虚しさ、悲しさみたいなものを感じる作品。
 
 
ー-------

以上14編、つらつらと述べて参りました。
SFっていうと、
ロボットとか宇宙とか、
その程度の認識しかなかったので、
新しい世界が開けた気がします。
 
おススメ!
 

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