“謎に引き込まれる映画”『トリとロキタ』感想

ミステリーの見せ方が、
近年見た映画の中で抜群に上手いと思った
映画の話。

トリとロキタ

ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ最新作『トリとロキタ』ショート予告

データ

公開:2023年(日本公開)
製作国:ベルギー・フランス
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ / リュック・ダルデンヌ

あらすじ

ベナン出身のトリとカメルーン出身のロキタ。
ふたりはアフリカからベルギーへたどり着く途中で出会い、
本当の姉弟のような絆で結ばれた。
すでにビザが発行されているトリの姉と偽り、ロキタはビザを取得しようとしていた。

トリとロキタはイタリア料理店の客に向けてカラオケを歌って小銭を稼いでいる。
しかし、それは表向きで、実はシェフのベティムが仕切るドラッグの運び屋をしている。
今日もベティムに指示され、ドラッグを客のもとへと運ぶ。
警察に目をつけられたり、常に危険と隣り合わせだ。ときに理不尽な要求もされる。
それでも受け入れるしかない。
人としての尊厳を踏みにじられる日々だが、トリとロキタは支え合いながら生活していた。

ある日、ベルギーへの密航を斡旋した仲介業者から、
祖国にいる母親へ送金予定の金を奪われる。
落胆するロキタ。
ふたりの夢は、なにも邪魔されずに祖国に仕送りをして、
ふたりでアパートを借りて暮らすこと。
一刻も早く、ビザを手に入れて家政婦として働こうと、偽造ビザと引き換えに、
ロキタはベティムが提案する孤独で危険な仕事を引き受ける。
目隠しをされて連れてこられたのは、
外界からの情報を一切遮断された倉庫のような場所。劣悪な環境。
さらに、外部の者に場所を特定されないように、携帯電話のSIMも没収される。

トリとロキタはどんな時も一緒だった。
なのに、離ればなれになってしまう…。

出典:『トリとロキタ』公式サイトより引用

この作品見ると、
良い物語の条件は、ミステリーを上手く見せられるかだと
あらためて思った。

はじめは、姉弟にごく近い周囲の状況しか見せないのだけれど、
段々ともっと広い周囲が見えてくるごとに、
本当の立場が見えてくる。
 
どういうことか。
この映画は、「弟を見分けた方法は?」と繰り返し聞かれる
ロキタの面接シーンで幕をあけるのだけれど、
なぜか、ずっと悲しそう。
そして、ロキタの話が二転三転することに、
「何を隠してるんだろう?」と謎が生まれる。
 
その次のシーンで、
トリとロキタの会話の中に
「あの日ボートで出会った時」と、
実は、まったく血の関係もない他人であることが分かる。
 
そこから、
なぜ?質問に答えられないのか?
⇒実は違法な手段で入国していた。
 
なぜ、ロキタはトリのために、
こんなに必死なのか?
⇒祖国に5人の弟妹たちを残していて、
トリのことをほっとけなかった。
 
どうして貧乏なのか?
⇒ビザを取得しないとまともに職につけない。
 
なぜ、ビザをもらえないのか?
⇒移民への無関心さが関係している。
 
では、どんな仕事をしているのか?・・・
 
 
シーンごとに、自然にQuestionが生まれて、
そのアンサーが映し出されて。。。
謎を追ってるうちに、いつの間にか引き込まれてる。

例えるなら、
カメラがアップショットから徐々にズームアウトしていくと、
周囲の状況が分かる感じ。
 
 
母からお金寄越せと言われ、
違法入国の仲介業者からも金をせびられ、
ビザも取らせてもらえなくて、
ドラッグ販売まで、強制され。。。
 
見えてくるものが増えるたびに、
人間の条件って何だろうね。って思っちゃう。
 
 
 
あとあと、トリがめちゃくちゃ賢い。
彼の活躍場面は、少年探偵団みたいで、
ずっとワクワクです。
もう、トリがいなかったら、ずーっとギスギスした
映画だったかもしれない。
とある場面での潜入シーンなんか特に良いね。
 
まあ、1か所だけ、
「そこからどうやって移動した?」って思うシーンはあるけれど。
 
 
そんなトリの存在が、愛おしくなればなるほど、
最後のシーンに切なくなる。
あの淡々とした感じも、リアルでね。。。
 
 
以上『トリとロキタ』でした。

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