“鏡を使った心理描写”パリ、テキサス 感想

映画

鏡を使った心理描写が巧みな映画の話です。

パリ、テキサス

パリ、テキサス デジタルニューマスター版 [ ハリー・ディーン・スタントン ]

データ

公開:1984年(日本では1985年)
製作国:西ドイツ・フランス合作
受賞歴:第37回カンヌ国際映画祭 パルム・ドールほか

あらすじ

テキサスの荒野で記憶喪失の男が保護された。
彼の名前はトラヴィス。

4年前、妻子を捨てて失踪したはずの男だ。
覚えているのは、
テキサス州の都市、パリを目指していたこと。

トラヴィスの弟ウォルトは、
彼を連れて、ロサンゼルスの自宅へと連れ帰る。
そこには、かつて置き去りにした息子がいた。

ぎこちなく、親子の関係を取り戻していく2人。

やがて、2人は行方知れずとなっていた、
トラヴィスの妻を探す旅に出る。

パリと聞くとフランスを思い浮かべますが、
アメリカのテキサス州にも
パリという都市があるとは初めて知りました。

劇中のセリフでも皮肉ってますね。
「テキサスの、ってつけないと勘違いされちゃう」と。

実は、タイトルは物語とかかっているのかも。
記憶喪失の主人公トラヴィスが、
「誰の、何であるか?」を見つめなおす話ですから。
 
 
物語が進むと、気が付いてくるんですけど、
記憶をなくすというより、
思い出さないようにしていたのでは?と。

振り返りたくない過去というのは、
自分が犯した過ちの記憶であるわけです。

“トラビスは何をしでかしたのか?”

これが、ビターな結末へと繋がっていきます。
 
 
 
「パリ、テキサス」で
目を見張ったのは、心の動きの描き方。

映像は、直接的な表現なので、
目に見えないもの、映せないものを描くのは難しい。

それを表現するためにこの映画で使ったのは鏡。
 

まず、車のバックミラー
トラビスとその弟ウォルトが車で語り合うシーン。
 
お互い触れるほど近い距離にいるのに、
バックミラー越しでのやり取りが続きます。
 
 
次に「のぞき部屋」でのシーン

マジックミラー越しにトラヴィスは、
妻・ジェーンと再会します。

そこで語られるかつての過ち。
 
ここでジェーンとトラヴィスの顔が
鏡越しに重なる瞬間は強く印象に残りました。
 
 
鏡とは、自分の姿を映すもの。
トラヴィスが誰かと会話していても、
目に映るのはトラヴィス自身。

相手を通して自分を見つめ直していくさまが、
描かれているのかな。と思いました。
 
 
そう、考えると
直接的じゃない鏡の表現もあります。

昔撮ったホームビデオや写真が出てくる場面。

在りし日の光景を切り取った、
それらも鏡かもしれません。
 
何より、息子の存在。
トラヴィスの分身であり、一番の鏡でしょう。
 
 
己を見つめなおした先に、
トラヴィスが出した答えは?
 
ほろ苦い結末も含めて感慨深い作品です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました