人間社会を風刺した、一風変わった映画の話。
ザ・スクエア 思いやりの聖域
データ
製作国:スウェーデン・ドイツ・フランス・デンマーク
公開:2018年
受賞:第70回カンヌ国際映画祭 パルムドールほか
あらすじ
現代美術館のキュレーターを務める、
クリスティアン。
その仕事ぶりは周囲から尊敬を集め、
さらに慈善活動も行う、
非のつけどころがない好人物。
そんなクリスティアンが
新しく仕掛ける展示、
「ザ・スクエア」は
地面に正方形を描いた作品だ。
その中では
「すべての人が平等で公平に扱われる」
という思いやりをテーマにしたアート。
展示の準備に追われる最中、
クリスティアンは財布とスマートフォンを
盗まれてしまう。
それらを取り戻すために取った行動が、
彼に思わぬ悲劇をもたらすことに・・・。
劇中に登場する
「ザ・スクエア」が
ちゃんと現代アートに見えるほど
よくできていて。
どんなものかというと、
展示場の入り口の床に
ただ正方形を描いただけなんです。
でその横に、
「ここにスマホと財布を置いてね。」と
書いてあるわけです。
普段、肌身離さず持ち歩いているものを
地べたに、無防備に置きっぱなしにするって
めちゃくちゃ不安になりませんか?
展示を巡ったあとでも、
スマホと財布は無事なんでしょうか。
このコンセプト自体は、
面白いですよね。
本当に思いやりを問われている気がします。
余談でした!
では、本編の話。
見てて、超、超、超!気まず~くなる映画。
鑑賞中、ここから逃げ出したい欲求を
抑えるのが大変。
普段、私たちはどう人と向き合っているのか?
というのを考えさせられました。
そういう点で、風刺映画。
当然ですが、世の中全員と知り合い、
友人になることはできません。
やろうとしても、めちゃくちゃしんどいです。
だから、付き合う人を
選定しているんですよね。
意識するともせざるとも。
では、選ばれなかった人。
つまり、誰を無視し、誰に罪をなすりつけ、
誰に対して無責任になれるのか。
この「誰」がたくさん物語に
出てくるわけです。
一人は物乞いやホームレス。
彼らがシーンのつなぎ目に、
多数挟まります。
普段関わりたくない人です。
主人公も口では
「救いの手を・・・云々かんぬん」言いますが、
彼らには冷たい。
というよりも、あまり関わらないように
目を背けます。
一人は常識外れの行動をする人。
中盤、パーティ会場で、
猿人が傍若無人に暴れまわるシーンが
あります。
この猿人というのは、
ちゃんとした人間です。
ただし、筋肉ムキムキの男性で、
ゴリラのような振舞をし乱入するわけ。
ゴリラなので、まったく言葉が通じない。
客の机を叩いてまわり、ドラミングし、
もう、完全にイっちゃってる人。
逃げたくても、
パーティ会場という閉鎖空間の中で
逃げられない。
近いもので言うと、
電車内で、急に叫ぶ人とか、
ずっと独り言を話す人に遭遇した時の
空気感です。
難癖つけようにもムキムキなので、
怖くてできない。。。
もう、絶対に関わりたくないので、
会場中の人間が全員うつむくんですよね。
「俺に来るな来るな」って。
この「我、関せず」な感じ。
身に覚えあるだけに
なかなか気まずい時間が流れます。
野人に真っ先に攻撃される人物が
「ザ・スクエア」を作ったアーティストである
ということも、何か勘ぐってしまいます。
ちなみにこのアーティストは、
講演会で野次の被害にもあうんですよね。
しかも、パーティ会場と同じく、
逃げられない空間で。
そして一人は、子ども。
主人公クリスティアンが、
盗まれた財布、スマホを取り返すためにした
とある行動。
その被害者である子どもが出てきます。
彼はクリスティアンに
謝罪を求めてしつこく迫ります。
自宅にも直撃して、頑なに帰ろうとしません。
悪いのはクリスティアンのはずなのに、
そのしつこさに、見てるこちらもイライラする。
このイライラしてしまうところが
ポイント。
悪い行動をする人たちと
それを問い詰める人が、
劇中何人も出てくるわけですが、
問い詰める側にイライラするという。
不思議な構図に映画全体がなっている。
気づいた時には見ている自分が
イライラしていることに、
ヒヤリとするわけです。
正しさよりも、同調を求めて生きている、
人間社会を風刺している映画かなと
感じました。
劇中に出てくる気まずい時間のすべてが、
そういう、言ってしまえば
異分子たちによるもの。
そして彼らは、社会的弱者でもある。
思いやりとは何でしょうね。
主人公は最後の最後に
本当の思いやりに気づくわけですが、
その時には、すべてが遅すぎていて・・・。
後味悪く、映画は幕を閉じます。
なかなか、インパクトのある映画でした。
ただ、シーンごとは面白いんですが・・・、
変わった撮影をしていたりね。
シーンごとは面白いんです。
けれど、物語としてあんまり
まとまってないような印象。
友達に見せて感想を聞きたくなる作品です。
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