“読書感想″ バカの壁

書籍

「知っている」と「分かる」は
違うよって話

バカの壁

バカの壁 (新潮新書) [ 養老 孟司 ]

バカってめちゃくちゃ強い言葉で
目を引きますが、
要するに言ってることはこういうこと。
 
お互いを分かろうとする姿勢が
時代とともに
どんどん減っていってるんじゃないか。
 
 
世の中、説明したって分かることばかりじゃない。
それは、みんな気づいているはずなのに、
“つもり”人間が多い。と。
 
知識があるから「分かっている」
けど、それは「わかっているつもり」なのだ。
 
 
この本の中では、
妊婦の出産ドキュメントを例にあげてました。
 
学生にこの映像を見せたところ、
女性は「勉強になった」「新発見があった」
という意見が多数。

いっぽう男性では、
「すでに授業で知っている」という意見が多数。
 
だったそうだ。
 
同じ人間なのに、
どうして意見が分かれるのか?
 
それは単に、
女性は自分事として見るため、
細かいディティールの部分まで見るから。
 
反対に男性は、細部には目をつむり、
知っていることにだけ目を向けてしまう。
 
 
とういうわけで、
一方の知識だけ持っていると、
他の意見に気づきにくい。
 
 
 
もうひとつ面白い話は、
物事に正解を求めすぎているんじゃないか。と。
 
例えば、リンゴの話。
 
「リンゴ」は全部違う形なのに、
どれも同じ「リンゴ」として
認識している。
 
さらに踏み込むと、
リンゴとペンで書いたとして、
同じ筆跡のものは存在しない。
 
もっと言うと、
「リンゴ」と口にだして言っても、
同じトーン。同じ大きさ、
同じ訛りで音になることはない。
 
 
言葉でも音声でも
全部違うのに、
「同じリンゴ」として理解する。
 
考えてみると、面白い。
なんとな~くの共通了解で、
日々社会を生きているということである。
 
知っているリンゴの特徴を注視し、
細部の違いには目をつぶって
「これはリンゴ」としているわけだ。
 
それは、細かいことを
気にしすぎて生きていたら、
脳がパンクしちゃうからで。
 
ある程度、
「こういうことでいきましょう」
と、共通了解で生きていることに
他ならない。
 
   
  
一方で、
強制了解というのも存在する。
 
分かりやすいのは、数学だ。
式があって答えがある。
 
それは、
答えを突き付けられるという意味では、
強制的かもしれない。
正か否か悩まなくていいからね。
 
社会問題を解決するのに、
役立つ考え方。
だけれど、
計算の方向を誤れば失敗もある。
 
 
ただ、この白黒はっきりする、
悩みにとらわれなくて良い考え方は
大体の人が好き。
何か問題があると、
めちゃくちゃ答えを探してしまう。
 
共通了解で社会が
成り立っているのに、
強制了解で社会を作ろうとするのだ。
 
 
 
最後に重要なこと!
 
お互いを分かろうとするうえで
大事なのは次のことを頭に
入れておくべし。
「万物は流転するが
情報は不変である」
こと。
 
 
つまり、
人は常に変わり続けているので、
現在と10年後では
見ているものは同じでも
感じることが違う。
 
 
例えば、
青森弘前市の桜並木はキレイだけれど、
「余命3か月」で見ると、
また違う風景に感じると思う。
 
それは、桜並木が変わったわけではなく。
 
立場によって、見方は変わる。
何より人間は成長するので、
毎日、同じ気持ちなはずがない。
 
一方で、情報は変わらない。
この「バカの壁」という本だって、
中身は10年先も20年先も
変わることはない。
 
変わって見えるとしたら、
自分の価値観が変わった。ということ。
 
 
昨日は腹の立たなかった相手でも、
今日は無性に腹が立つのはよくあること。
それは、相手が悪いんじゃなくて、
実は自分が変わったのかもしれない。
 
ってなことが
「バカの壁」には書かれているわけです。
 
 
 
著者の養老氏が言っているのは
物事は、必ず二つ以上の見え方があるのだから、
自分の物差しだけで善悪を捉えると、
底の浅い人間になるよ。って
 
そういうことなんじゃなかろうか。
 
 
そういうわけで、「バカの壁」でした。
200ページくらいだし、
口語体なので、気軽に読める本です。

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