“レトロ映画感想” 『恐怖分子』

映画

誰しもにある「孤独」が
つながりあって、恐怖となる。
そんな映画の話。

恐怖分子

恐怖分子 デジタルリマスター版 [DVD]

データ

公開:1996年(日本公開)
製作国:香港、台湾
監督:エドワード・ヤン

あらすじ

銃声が響き渡る台北の夜明け。
警察から逃げだした少女シューアン。
偶然銃撃戦の場に居合わせたカメラマン、シャオチェン。
そして、
出世を画策する医師のリーチョンと、
その妻で、スランプ中の小説家イーフェン。
 
何の接点もなかった人々が、
シューアンのかけた、いたずら電話を引き金に、
人間関係が複雑に連鎖し、
やがて悲劇へとつながっていく……。

1986年製作の本作。
 
銃撃戦に逼迫する連中がいるなか、
我関せずを決め込む周辺住人のギャップ。
このどこか物寂しい雰囲気、
これが当時の空気感だと思うと興味深い。

 
そんな印象に拍車をかけてるのが、
BGMがない。
顔のアップショットが少ない。
この2つ。
 
登場人物の誰にも感情移入させないような作りが
寂しさを増幅させてるような。
 
医者のリーチョンの視点に立ってみると、
めちゃくちゃ、この人カワイソウなんですよね。
 
妻は浮気しちゃうし、出世の話も危うくなるしで。
 
真面目に働いてるのに!
「なんで、こんな目に!!」という声が聞こえてきそうだ。
劇中に、そんなセリフはないけれど。
でも、けっこう現代日本人も、
「どうして私ばっかり」って思うことないだろうか。
 
そんな都会特有の寂しさがギュッとされた印象の映画でした。
援助交際するシューアンとか、
シューアンに一目ぼれしたことで、
彼女と別れる羽目になったシャオチェンとか、
同じことの繰り返しばかりで日常に辟易しているイーフェンとか。
 
誰かひとりにフォーカスするのを避けることで、
誰しも、境遇の差なく等しく孤独だって
言われてるような気もする。
 
 
リーチョンが最後についたウソ。
あれがめちゃくちゃ、やるせなくなりますね。
 
 
 
一回見ただけだと、
違和感があったりで、飲み込みづらい部分もある。
たとえば、銃で撃ったのに、
血が流れないシーンとか。
 
それが、見返すと、
○○だったから血が流れなかったのね。
と、気づけたりするので、
けっこう繊細に組み立ててる作品なんだなぁと
思いました。
 
たまに、孤独を感じたときに
一見してみるといいかもしれない映画です。

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