“日本未公開映画″『Mishima: A Life in Four Chapters』感想

映画

作家・三島由紀夫の生涯を
彼の文学作品とともに描いた映画の話。

Mishima: A Life in Four Chapters

Mishima: A Life in Four Chapters (Criterion Collection) [DVD]

データ

製作:1985年(日本未公開)
製作国:日本・アメリカ
監督:ポール・シュレイダー

小説家であった三島由紀夫の人生を
「美(beauty)」
「芸術(art)」
「行動(action)」
「文武両道(harmony of pen and sword)」
と、4つに章立てて追っていく映画。
 
三島由紀夫役の緒形拳さんを筆頭に、
全員、豪華日本人キャスト。
しかし日本未公開作品。

 
 
まず、映画の前に知っておいたほうがいいのは、
通称「三島事件」と呼ばれる1970年の出来事。
 
三島由紀夫が自身の組織「楯の会」のメンバーと共に、
市谷駐屯地で、益田兼利総監を拘束。
当時の日本の憲法に意を唱え、
自衛隊にクーデターを呼び掛けた後、
割腹自殺をした事件。
 
三島氏が憲法改正を求めたのは、
おそらく第9条のことだと考えられている。

なぜ、事件を起こすにいたったのか。

本人が語ったわけでもないので、
さまざまな人が、十人十色な憶測を立てている。
この映画も、そんな事件に
憶測をたてた、一種の伝記映画。
 
わざわざ、日本国外の監督が
映画を作っているところから、
三島文学への海外人気もうかがえる。
 
 
この映画、軸が3本あって。
・三島由紀夫の事件当日の話
・過去の話
・三島氏の小説

 
それらの物語が、絡み合って
絶妙なバランスで一本の話にまとまってる。
 
まず、本編のはじまりは
事件当日の朝。
ベッドから起きていつものルーティーンをこなし
制服に袖を通す三島の画。
 
この次は、幼少期から少年期の
三島のシーンへと切り替わる。
母と写真を撮った思い出が描かれる。
その後、場面が変わり、
 
三島氏の小説
「金閣寺」の一部分が始まる。
 
 
と、3つの話が、交互に繰り返される。 
ここまで複雑だと、
今、何の話をしているか混乱しそうだけど、
上手く色分けしてて。
 
現在の話はカラー。
過去の話はモノクロ。
小説は書き割りのセット中心の画。
という具合に分けて見せている。
 
 
特に小説パートのセット。
映像作品は、大体セット感を消す方向に
画作りするけれど、
これは、セット感を強調した画作り。
作り物の話であると暗に言っている。
 
けれども、そのセットがグラフィカルで、面白いんです。
警察署の檻と、青空に浮かぶ雲が組み合わさった画とかね。

それにしても、
事実と虚構を、なぜ混ぜているのか。
小説も作家の一部。
その時々で思ったことが反映されていると考えれば、
小説の世界を描くということは、
三島氏の心情を描いているかもしれない。

 
事件に至った三島氏の心情を小説の一部を引用することで、
おしはかろうとしているというか。
 
考証とは、また違い、
見る人によって自由に捉えることができる、
面白い作りだと思いました。
 
 
最後の最後。
過去、現在、空想、すべての終わりが
繋がっていく感は、見てて気持ちいい。

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