映画感想 ‶キリエのうた”

純粋で美しい、百合映画。
そう思った。

キリエのうた

映画『キリエのうた』60秒予告【10月13日(金)公開】

データ
公開:2023年10月(日本公開)
製作国:日本
監督:岩井俊二

あらすじ

歌うことでしか“声”が出せない路上ミュージシャン・キリエ
姿を消したフィアンセを捜し続ける青年・夏彦
傷ついた人々に寄り添う教師・フミ
過去を捨て、名前を捨て、キリエのマネージャーを買って出る・イッコ

石巻、大阪、帯広、東京――。出逢いと別れを繰り返す4人の壮大な旅路。
13年に及ぶ魂の救済を見つめた物語。

出典:音楽映画『キリエのうた』公式サイトより

岩井監督特有のシンプルで引き算された画面作り。
ドキュメンタリーを見ているようで、
どこかであった話なんじゃないか、とそのくらいのめり込む。
 
でも、やっぱり映画で良かった、と思えるいい作品。
 
12年前、5年前、現在。
3つの時代を駆け巡り、音楽で紡がれる4人の愛。
切なくて、でも美しいなと思う。
 
 
路上ミュージシャンだから、過去の名曲をカバーしていくというのが絶妙で。
というのも、100人中100人が良い!という音楽は存在しない。
好みは人によって全く違う。
けれど、過去名曲となり、今も歌われている曲は別。
好き嫌いは別にして、いい曲であることは大体の人が知っているので、
曲の良さに疑問をもつことなく、アイナ・ジ・エンドさんの歌声に集中できる。
で、アイナさんも歌声がカッコいい!
 
 
ほぼ手持ちカメラで構成された映像も印象的。
固定カメラだと、「撮ってます、演技してます」という
作り手の意志が際立つので、それを嫌ったのだと思うのだけど。
この、作りこまれた「作られてない空間」というのは好きなんですよね。
 
最近、日本のドラマとかアニメとかで見かける演出に
「つまり、○○ってことだ!」とか「要約すると○○ですね」とか。
急な説明口調をカメラ目線でやるものがある。
しかも、それまでの流れと全く同じ説明を繰り返す。
それを見るたびに、作り物を強く意識させられて、
物語の世界から急に覚めちゃうのだけど、そういうのが無い。
 
 
キャスト陣の、限りなく素に近い演技も、
キリエの世界観を引き立てていい。
とくに、表情の演技はすごい!
 
 
 
・・・ここから、若干ネタバレ。
 
お互いがお互いに抱えきれない感情を持ってるなと。
年上のお兄ちゃんに抱く恋心であったり。
亡き恋人の面影を妹に重ねてしまったり。
そして、もしかしたら親友に恋心みたいなものも
あったんじゃないか・・・。
 
ラストのある人物の表情に、全部込められてる気がする。
気づいてしまった、手に入れられないものとか。
そのための別れとか。いろんなことを考えた。
 
しかし、劇中で人物の心の内は多く語られることはない。
描いていないわけではなくて、セリフで語られない。
特にキリエは、まったく語られない。
周りの客観的情報からおぼろげながら見えてくるキリエ像。
きっと見る人によって違う人物像になるんだろうな。
アーティスト名が「kyrie」とキリスト教に関わる言葉になってて、
実は「祈り」とか、「願い」がキーワードかなとも思う。
あと、キリスト教の三位一体の考えも、要素としてありそうと考えると、
いろいろ考察がはかどる。はかどる。
 
 
 
まったくの余談ですが、
岩井監督、樋口監督好きすぎじゃない?
だんだん樋口監督の演技が上手くなっててほっこりする。

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