久々に、なんか濃いのを見たな~。
あんまり濃いので、気持ちのデトックスをしたくなって
感想、書いてみます。
サブスタンス
公開:2025年5月(日本公開)
製作国:イギリス・フランス合作
監督:コラリー・ファルジャ
あらすじ
元トップ人気女優エリザベスは、50歳を超え、容姿の衰えと、
それによる仕事の減少から、ある新しい再生医療<サブスタンス>に手を出した。
接種するや、エリザベスの背を破り脱皮するかの如く現れたのは若く美しい、“エリザベス”の上位互換“スー”。
抜群のルックスと、エリザベスの経験を持つ新たなスターの登場に色めき立つテレビ業界。
スーは一足飛びに、スターダムへと駆け上がる。
一つの精神をシェアする存在であるエリザベスとスーは、それぞれの生命とコンディションを維持するために、
一週毎に入れ替わらなければならないのだが、スーがタイムシェアリングのルールを破りはじめ―。出典:映画『サブスタンス』公式サイトより
サブスタンスという単語には、
「本質」というニュアンスもあるらしい。
ひとりが二人に分裂するというファンタジー。
それが理想の自分と、現実の自分のギャップに苦しむ、現代人に似ている。
今作は「美」にフォーカスをあてているけれど、
そんな自意識に苦しめられている人は多いんじゃないか。
例えばダイエットとか「頑張っているのに痩せない」ってさ。
誰も責めていない。
責めているのは自分自身。
頭の中の自分は「こんなんじゃダメだ。もっと努力を」と叫ぶ。
一方で「これ以上頑張れない」と思う自分もいる。
二人の自分がずっと闘っている感じ。
ただ、どちらも「自分」なんだよなぁ。
「本質」はどちらも同じひとりの人間ということ。
別の人間ではない。
この自分自身の描く「らしく」の呪いとの闘いはなかなか苦しい。
映画本編で象徴するシーンは、
エリザベスがかつての同級生と食事に出かけようとするシーン。
番組関係者たちからは、ロートル扱いされ、
エリザベスは精神がボロボロの状態。
誰からも必要とされないと感じていた時期に、
“今のエリザベス”と食事をしたいと同級生がさそってきます。
「お、これで立ち直るのかな?」と思っていたんですが、、、
出かける直前になって、自分に自信がなくなっていきます。
待ち合わせの時間がせまっているのに、
何度も何度もメイクをなおして…結局行かない。
見てて辛かったですね。
辛いんですが、悲劇と喜劇は表裏一体といったもので、
笑っていいんだか、悲しめばいいんだか。
いい意味で2面性のあるシーンがたくさんある。
ほかには、暴飲暴食しまくるところとかさ。
自意識と闘いつづけたラストは本当に阿鼻叫喚。
度肝を抜かれました。
余韻がすごい。
あそこまでいったら、ぶち壊すしかない。
この映画で象徴的なのは、
何度も出てくる通路のショット。
ロングショットで、周囲は暗いんだけど、
通路の奥、エリザベスのいる部分だけ光が当たっているショット。
深層心理を覗き込むかのような印象深いショットです。
もうひとつ印象深いのは、最初のハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに
エリザベスの名前が刻まれたプレートが映し出されるのだけど、
これが、通行人に汚されていくショットがあるんですよ。
で!終盤エンブレムがもういちど映し出されるショットがあるんですが、
そのとき、エンブレムを汚すのは誰か?
あのショットを見たとき、何とも言えない寂しい気持ちになりましたね。
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