これは現実か?妄想か?
映画界の巨匠ヒッチコックの
傑作と名高いサスペンスミステリー。
データ
製作国:アメリカ
公開:1958年
あらすじ
めまいがするほどの高所恐怖症のため 刑事を引退したジョン・ファーガソン。 彼のもとに、旧友のエルスターが訪ねてくる。 不可解な行動をとる妻、マデリンの素行調査を してほしいというのだ。 しぶしぶ依頼を受けたジョンは 彼女の尾行を開始。 調査を続けるうちに、彼女の魅力に取りつかれた ジョンは恋をしてしまう。 しかし、マデリンはある日、 塔から身投げしてしまった。 失意の中、口もきけなくなったジョンのもとに ある日、マデリンそっくりの女性が現れて・・・。
まず、オープニングからにじみ出る、
ただものではない感。
印象的な螺旋模様が
現れては消え、現れては消え・・・
ヒトの目におさまり、
またその目から、螺旋がでてきたり。
めまいがしてきそう。
ヒッチコック作品は、
すごく恐ろしい場面があるわけではない。
けれど、一連で見ると
どことなくおさまりの悪い
「居心地の悪さ」みたいなのを感じます。
編集の妙というんでしょうか。
これが、サスペンスとして機能しているのかな。
前半は、謎が謎を呼ぶミステリー!
主人公ジョンが追うマデリンは、
脈絡なく、いろんな場所を巡りますが、
不思議なことに、その全てを覚えてないのです。
調査を続ける中、
ジョンはマデリンが巡っていた場所が、
彼女の先祖に関わる場所だと
気づき始めます。
はたしてこれが意味するものとは?
後半は、産毛だつほどのサスペンス。
追いかけていたマデリンが身投げをしてしまい、
ジョンが心身喪失状態になります。
しゃべることもできなくなったジョン。
偶然出会ったマデリンそっくりの人物、
ジュディに執着し始めます。
猛アプローチの結果、
付き合うことになった二人。
しかし、ジョンはつま先から頭の先まで
記憶の中のマデリンに近づけようと、
ジュディの服装や髪型まで
細かく指定し始めるのです。
そんなジョンに嫌気を感じつつも、
ある負い目から離れることができないジュディ。
2人の行き着く先は・・・?
とにもかくにも、
過去や現在、妄想全ての出来事が、
めまぐるしく混ざり合い、
次第に、どれが現実かの区別がつかなくなる。
まさしく「めまい」そのもの。
加えて、本編の大半を映像表現だけで
感情などを説明しきっているのは素晴らしい。
特に有名なのは、
俗に「めまいショット」と呼ばれる技法です。
カメラをズームアウトしながら、
被写体に近づけることで、
被写体の大きさは変わらず、
背景だけが遠のくという異様なショットが
出来あがる。
高所から下を覗く時に頻繁に使われ、
主人公ジョンの「めまい」を体現した、
印象的なショット。
そのやりかたから、
「ドリーズーム」とも呼ばれています。
また、
もう1点、印象的なのはマデリンの横顔。
ジョンがマデリンを最初に見かけた時に、
彼女の端正な横顔がクローズアップされる
カットがあります。
そのあと、マデリンに似たジュディと
出会ったシーンで。
ジュディの横顔がマデリンとの対比に
なるように撮られたカットがあります。
ただし、こちらはシルエットで。
ジョンがジュディのことを
見ていなかったことの表れなのでしょうか。
そのほか!
こちらは編集の妙ですが、
マデリンの幻想に捉われるジョンの頭の中と、
現実がシームレスに繋がり、
「めまい」が観客にも浸食してくる感じ。
めちゃくちゃ上手いです。
さて、そろそろしめましょう。
この物語は登場人物全てに、
誰にも打ち明けられない「思い」が
隠されています。
それが、交じり合い
歪な形となったころ、
真実が明らかになります。
そのなかで、ジョンが辿り着く
まるで白昼夢のようなラスト。
キツネにつままれたような、
そんな気分になる映画でした。
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