この地球上の人類社会は、
出典:「日本沈没 下」 P105より引用
まだ一つの国民が、自分たちの国土以外の所で
生きる権利を保障されるようになっていない。
今年、放送されたドラマ「日本沈没 -希望のひと-」
それきっかけに
73年、06年の映画版、
20年のアニメ版と、
どっぷり日本沈没の沼にハマり、
ようやく、原典。
原作小説を読み切りました。
今回は、小松左京先生が生んだ傑作SF小説
日本沈没の感想です。
あらすじ
鳥島の南東にある無人島が、一夜にして海中に沈んだ。
出典:「日本沈没 上」裏表紙より引用
深海潜水艇の操艇責任者の小野寺は、地球物理学の田所博士とともに、
近辺の海溝を調査し、海底での異変に気づく。
以降、日本各地で地震や火山の噴火が頻発。
自殺した友人を京都で弔っていた小野寺も、地震に巻き込まれ、
消息不明になるが、ある日突然、ナポリの消印がある辞表が会社に届く。
どうやら田所の個人研究所と関係があるようで……。
上下巻に分かれていて、合わせて700ページを超える
超大作となってます。
圧巻ですね。
もし、日本という国が無くなったら?
それを徹底的にシミュレーションした小説で、
日本列島が沈んでしまう原因を探るD-1チームと
日本人救出に重きをおいたD-2チームの
二つの視点で物語は進行します。
「日本が無くなったら?」をシミュレートするうえで、
最初に考えなきゃいけないのは、
どうやったら日本を沈められるか?
でしょう。
それを小松左京先生が
煮詰めに煮詰めたと分かるのは、
上巻終盤にある、田所博士による
十数ページにおよぶ解説。
日本列島に起こる悲劇は
マントルの動きによるものだ!
それによって、噴火、地震、津波
災害が連鎖的に発生し、日本は沈む。
要約するとこういうこと。
これを延々と書き綴っている部分は、
その熱量に圧倒されます。
読んでると、なぞの疲労感が生まれるくらい。
どこか一部分をきりとってみても、
緻密に執筆されたことが分かります。
調べてみると、どうやら仕上げるのに
9年を要したらしく、
非の打ちどころがないです。
ただ完璧に仕上げすぎて、続編を作るのが困難になり、
執筆するのに30年かかってます。
また、沈む原理もそうですが、
社会的にも一国がなくなるとしたら、
どうなるのか?を突き詰めています。
日本列島が沈むとなれば、
当然、逃げる手はずを整えなければいけません。
船と飛行機が大量にいります。
しかし、国内だけでは賄えないので、
外国に助けを求めるのですが。。。
日本を救うために、船をまわせば、
国の貿易経済がストップするので、
各国に嫌がられるという。ね。
さらに、日本移民をどこまで受け入れるか?
という問題も出てきます。
移民問題は、現在でも解決が難しいのは
みなさんご存じだと思います。
この本で描かれているのは、
日本という国がなくなった時、
日本人は世界に受け入れてもらえるのか?
これにつきます。
自国内で経済がまわせるだけに、
世界的というよりは、
独自の文化を築き上げていった日本。
外国で辛い目にあっても、
日本に戻れば、全員温かく迎えてくれる。
でも、帰るべき場所が無くなったら?
闘っていけるのだろうか?
日本はG7の一員であるけれど、
世界スタンダードではないのです。
「日本沈没」は、
日本人がこれからどうなっていくのか?を
描かずに終わります。
その先は、読者に委ねているわけです。
今読んでも、
身につまされる名作でした。
原作読んでて感じたのは、
構想9年は伊達じゃない!ってところですね。
これまで多種多様の映像化作品が生まれました。
それぞれアレンジが加わっています。
ただ、ちょっとやそっとの脚色では・・・、
黒電話がスマホに変わったとかくらいでは、
脚色と呼べずに、違和感のほうが目立つくらい、
原作は繊細にできてるんだな。と。
あらためて思いましたね。
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