”地雷と少年”ヒトラーの忘れもの

映画

地雷を撤去したのは英雄ではない
そんな映画の話。

ヒトラーの忘れもの

ヒトラーの忘れもの 【Blu-ray】

データ

公開:2015年
製作国:デンマーク、ドイツ

あらすじ

舞台は1945年―。
第二次世界大戦後、
ナチス・ドイツの占領から
解放されたデンマーク。
 
ドイツ軍が海岸線に埋めた無数の地雷を
撤去するためデンマーク軍は
14名の元ドイツ少年兵を動員した。
 
彼らを指揮するのは、
デンマーク軍 軍曹ラスムスン。
 
ドイツ兵に激しい憎しみを抱く彼だったが、
撤去作業中に次々と命を落とす少年兵を見て、
次第に、心が揺らぎはじめていく。

映画はフィクションですが、
地雷を撤去するのに捕虜兵を動員したのは
本当にあったことだそう。
 
2,000人以上が作業を強要され、
うち、半数が命を落とし、手足を失うなどの
重症をおったといわれています。

さらに、撤去作業に従事させられた兵の
多くは無垢な少年たち。

 
この残酷な事実を映画では浮彫にしていきます。
 
 
 
主人公ラスムスンは、
ドイツ兵に対して置き場のない怒りを
抱えています。
 
ドイツの敗残兵を見かけたら、
すれ違いざまに、ボッコボコ。
 
そんなわけで、地雷撤去の任を受けた時も、
連れてこられた少年兵たちを
罵倒しまくります。
 
少年たちが体調不良を訴えても無視。
空腹を訴えても無視。
さらには地雷が撤去されたか分からない砂浜を
少年たちに歩かせる「死の行軍」
なんてこともやります。

恨み辛みの捌け口にされる、
少年たちを見てると、
いたたまれなくなる。
 
農家の人間ですら、
彼らの処遇を「いい気味」だ
と吐き捨てるあたり、
戦争が残したものの大きさを感じます。
  
 
そもそも地雷撤去ってどうやるのかというと。

ほふく前進しながら、棒で地面を突き刺し、
硬いものに当たったら慎重に砂をどけて、
地雷を掘りおこし、信管を抜く。

すぐには逃げ出せない体勢なんですね。
一歩間違えば、待つのは死
 
そして少年たちは、地雷を設置したこともない
素人たち。
よって、物語中でも容赦なく
彼らは命を落としていきます。
 
映画でよくあるような爆弾処理とは
わけが違い、
前触れもなく本当に突然、ボンッ!
あっけなく死んでいく。 

見えない脅威を丁寧に描いたことで、
物語が進むにつれて、
なんてことない歩きのシーンでも、
サスペンスを感じます。

「もしかして踏んじゃうんじゃ」ってね。
ラストカットでも安心できない。
 
 
 
ただ、残酷な境遇でも、
少年たちは、任務に従います。
 
そんな彼らを見ていくうちに、
ラスムスンは、ナチスの責任を
彼らに負わせることに、悩みはじめていく。
 
戦争を始めたのは大人。
しかし後始末をするのは子ども。

正義ってなんだ?
 
 
最後に、映画的に面白いと思ったポイント。
侵略したナチスも悪いはずなのに、
主人公サイドだけが悪く見える構成。

感情と理性とがグチャグチャになります。

観客も試されてるって気がしましたね。

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