他人の人生ほど、のぞき見したくなるものはない
・・・な映画の話。
裏窓
データ
公開:1955年
製作国:アメリカ
あらすじ
スクープカメラマンのジェフは、 事故で足を骨折し、車いす生活。 部屋から一歩も出られない彼の楽しみは、 隣人の生活を覗き見ること。 向かいのアパートの住人たちが織り成す人間模様を 窓から観察するのである。 ある日、隣人のひとりが姿を消したことに気づく。 いつも口喧嘩の絶えなかった夫婦の妻だった。 その日から不審な行動をとる夫に、 違和感を覚えたジェフは、観察を続けていくのだが。
他人事ほど、
気楽に見れるものはない。
夫婦喧嘩も、
男漁りも、
婚活に勤しむ姿も、
はたから見ると、下らないけれど、
しかし、当人たちにとっては
死活問題なのだ。
それを見て、
当事者でなくて良かったと
私たちは安心する。
「裏窓」の主人公の
窓から覗き見る行為には、
そういったものが含まれている。
これって何かに似てないだろうか?
「映画鑑賞」である。
500インチほどのスクリーンに映し出される
他者の人生を、時に笑い、時に泣き、
私じゃなくて良かった。とヒト安心。
そういう意味では、
「裏窓」は映画のメタファーでもあり、
映画の醍醐味が全て詰まっているのかもしれない。
この映画では、主人公が部屋から動けない設定なので、
全編、カメラはジェフの部屋から出ない。
この辺りも、劇場で映画鑑賞をする観客を
表しているといっても良いかも。
舞台がワンシチュエーションのため、
芝居の見せ方は演劇に近い。
けれど、やっぱり骨組みは映画なのです。
窓から見た情報だけでは、
夫婦に何が起こったのか、推測するしか
ジェフにはできない。
物語が進むごとに集まる
断片的な情報を集めて、
どうやら殺人事件らしい。と
結論に至るのだが、
誰にも信じてもらえない。
そして、とうとう
ジェフは犯人に気づかれてしまい・・・。
今まで他人事としてみていたものが、
突如、自分事になってしまう、
この観客への裏切りが、
サスペンスとして面白い。
ヒッチコック作品は、実を言うと
あんまり肌に合わない部分もあるんですけど、
なんか「裏窓」はしっくりきましたね。
コメント