「学ぶ」とはどういうことか?
を言われ続けてうんざりした人へ向けた映画の話。
きっと、うまくいく
データ
日本公開:2013年
製作国:インド
あらすじ
インドの超難関理系大学ICE。
若き天才が競い合うキャンパスに通う3人の問題児。
型破りな自由人のランチョー、
機械よりも動物が大好きなファラン、
なんでも神頼みの苦学生ラージュー。
3人の引き起こす珍騒動を描きながら、
インドの教育問題も描き、
「今を生きる」ことを問いかける。
一見、単なるコメディかと思いきや、
実はストーリ―ラインが二つあって。
1つは、大学生時代のドタバタを描いた話。
2つめは、10年後、行方不明となった
ランチョーを探すミステリーの話が交互に展開していきます。
楽しい時間が続けば続くほど、
「なぜ、こんなことに?」がより深まっていく。
そして、なにより、
ポリウッド式ミュージカルが
激烈に楽しい映画。
ハリウッド式との違いはというと、
空間と時間を超越する。ことかと思います。
ミュージカル映画の多くは、
A地点からB地点までの道のりを
歩くとき、とか
とある場所での
AさんとBさんの口論であるとか、
1シチュエーションの
狭い空間で成立しています。
ウエスト・サイド・ストーリーも
愛を語らう場面では、
建物の階段を利用していて、
基本的にその場から動きません。
しかし、
「きっと、うまくいく」では、
突然、空を飛んで雲の上で踊りだしたり、
自由自在。
1曲の中に、
シチュエーションがいくつも出てきます。
「空間」を超越してくるんですよ。
さらに、「時間」
ハリウッド式では、
基本的にミュージカルは見せ場であって、
ストーリーを進行させるものではないと
感じます。
ところが、「きっと、うまくいく」では
違います。
例えば、登場人物の一人が事故で
入院生活を余儀なくされるのですが、
入院から、回復するまでを、
1曲の歌とアクションで描きます。
ストーリーの「時間」を進行させる要素も
持っているんです。
もはやミュージックビデオに近い演出は、
曲の長さが気にならないくらい気持ちいい。
特に「Aal Izz Well(きっとうまくいく)」
という曲は、かな~り耳に残ります。
カラフルな画面の色使いに、歌と踊り、
見てるだけで楽しい演出ですが、
いっぽうで、かなり深刻なインド社会の闇が
描かれていたり。
それは、競争社会の圧に押しつぶされ、
自ら命を絶つ、若者が多いこと。
この映画が公開された当時、
インドの若者自殺率は、非常に高く、
自殺者全体の4割が18~29歳までのかた
だったそうです。
この年頃というと大学生でしょうか。
その理由のひとつとされているのが、
苛烈な競争社会であるということ。
カースト制度もあるインドでは、
優劣に対するこだわりが強いようで。。。
「優秀でなければいけない」という圧迫が、
多くの大学生を苦しめていきます。
試験の度に、成績下位は
バシバシ落第させられていく。
宗教的に自ら命を絶つことは
禁じられていますが、
それでも、「やるしかない!」状況に
追い込まれているとは・・・。
映画の主役も描かれるのは、そんな学生たち。
とあるシーンで、
自分の首をくくるシーンが突然出てくるので、
かなりショックがデカい。
そんなインド社会への痛烈な批判を、
コメディで丸くつつみ込んだ映画です。
喜劇って本来こういうものかもしれません。
何かを学ぶのは競争のためか?
いや、「誰かの問題を解決したい。」
「笑顔にしたい。」
そんな純粋な願いじゃないだろうか。
どうしても、こういうことって、
普通に語ると、いじっぱりな反発心が生まれます。
「そんなの分かってるよ!」って。
ですが、ポリウッド式ミュージカルのおかげで、
ストンと頭に入ってくるので、
本当、これはスゴイ発明だと思う。
ぶっちゃけ、
ミュージカルシーンは
ハリウッド式より遥かに楽しい。
以上、
「きっと、うまくいく」でした。
コメント